経営の健全性・効率性について
分析欄2のとおり給水区域が東西に長い形をしており、管路総延長が1,200km以上と非常に長い。一方で、人口減少期に入り、給水収益が横ばいになる中、全ての施設設備を一度に更新することは困難である。このため、取水・浄水施設や重要給水管路の改良工事を優先した結果、2②管路経年化率のとおり配水支管の老朽化が進み、修繕費用が年々増加している。ただし、改良工事の対象を的確に絞った結果、⑦施設利用率・⑧有収率は同水準で推移しており、施設設備の機能は維持できている。また、平成25年度から平成29年度までの5年度にわたり、耐震化を目的とした取水・導水施設の改良工事を行った。この結果、企業債残高と減価償却費が増加し、④企業債残高対給水収益比率と⑥給水原価の悪化につながっている。もっとも、①経常収支比率・⑤料金回収率は引き続き100%超過となっており、経営の健全性は維持されている。このような経営状況から、毎年の企業債の元金償還額も増加傾向が続いており、③流動比率の緩やかな低下をもたらしている。数値は流動負債の1.6倍の流動資産があることを示し、依然として高い資金能力があることが分かる。健全経営ながら、数値の悪化要因が修繕費用と減価償却費の増加にあるため、今後もこの傾向がしばらく続くものと考えられる。事業継続に必要な資金能力が維持されているかを含め、各指標の動向に留意しなければならない。
老朽化の状況について
本市の市域が東西に大きく広がるため、給水区域も東西30kmにわたり広がっている。このため、管路総延長が1,200km以上と非常に長く、その9割が配水支管であり、全ての管路を一度に更新することは困難である。本市の市勢発展に伴う宅地造成が昭和50年代に集中していたため、②管路経年化率・③管路更新率の数値が他事業体よりも低調に出やすいのはそのためである。経営の健全性・効率性とのバランスを考えると、法定耐用年数を超過しても使用に堪え得る配水支管をどのように活用するかがポイントであるので、数値の内情について都度確認していくことが重要である。なお、耐震化・老朽化対策については、苫小牧市水道ビジョンに基づき、取水・浄水施設や重要給水管路を優先して取り組んでいるところである。
全体総括
全体として健全経営が維持されていると判断できるが、施設設備の老朽化に伴う更新・維持管理費用の増大が顕在化し、かつ、今後もこの状況が続くものと考えられる。特に、数年後には、減価償却費の増加により、資金能力は確保されるが当年度純利益を維持できなくなる可能性が高い。各指標が好転するにせよ悪化するにせよ、資金能力を含め、どのような要因で経営を進めていくべきか、中長期的な見通しに基づく判断が不可欠である。このため、平成30年度からの10年計画である苫小牧市新水道ビジョンの策定に続き、新設改良工事の計画を踏まえた経営戦略の策定を行っているところである。本市においても人口減少が始まっており、より計画的に、かつ効率的で健全な経営につながるよう、一層の努力が必要である。