経営の健全性・効率性について
平成28年4月の供給単価7.2%増の料金改定実施に伴う給水収益の増加により①経常収支比率・⑤料金回収率は著しく増加した。また、企業債残高が減少しているのに横ばいだった④企業債残高対給水収益比率は、前年度対比2億増という給水収益の恩恵を受け、低下した。そして給水収益の増加は、現金(流動資産)の著しい増加をもたらしたが未収金(流動資産)も増加したため、③流動比率に若干の改善が見られたものの、類似団体と比較するとまだまだ資金の余裕度は低い。平成27年12月しまなみ送水事業により吉海簡易水道への分水が始まり有収水量が増加。また平成28年4月には、市内に大型商業施設が開設し業務用有収水量も増加。これらを起因に⑦施設利用率は上昇した。有収水量の増加は⑥給水原価の低下ももたらした。市内玉川地区は従来有収率が低く、漏水が懸念させるが場所の特定には至っていない。そのため、市内全体の⑧有収率は93%台を推移し続けている。本市では現在(仮称)高橋浄水場整備事業を実施しており、平成29年度から平成33年度にかけ多額の費用支出・企業債借り入れを予定している。本市の地域的な状況として水道料金が低廉な近隣市と隣接しており、人口流出傾向にある状況において、地域間格差の観点から更なる料金値上げは慎重にならざるを得ない。そのため繰出金等を含め水道事業財源の確保・増収を、市全体の施策として取組み、計上収支比率の維持を図る必要がある。
老朽化の状況について
本市においては平成25年度にアセットマネジメント計画を策定し将来の更新投資を検討したところである。現在進めている(仮称)高橋浄水場整備事業が平成33年度完了予定であるが、事業完了後は既存施設の廃止により施設の更新率の大幅な上昇が期待できる。本市では施設の老朽化対策を優先的に実施しており、管路対策が資金的にも後手へ回っているが、将来的には③管路更新率が1.6%(更新期間60年)以上となるよう管路更新を実施する必要がある。施設・管路の更新に合わせ耐震化率も向上させていく予定である。しかし、管路更新のための資金確保が不十分な現状においては、収益性を重視した更新投資を行わなければならず、収益性の低いエリアでの漏水リスクへの対応が課題となっている。水道ビジョンに基づく浄水施設の統廃合が完了したあと、老朽管路の更新に注力する予定である。
全体総括
今治市において人口減少や人口密度の低下により家庭用有収水量は今後更なる低下が予想される。現在、施設を統廃合し集約化することにより収益性を高めるための投資活動を「今治市水道ビジョン」に基づき実施しているところである。また、施設老朽化対策に基づく管理コストの増加を抑制するためには、計画的な更新投資を拡充する必要があるが、これには減価償却費の積立を要する。収益効率の向上や資金確保に対応するため、平成28年4月に水道料金を改定し、受益者に負担増加をお願いした。施設・管路の更新率向上には更なる費用を要するが、経費節減の施策として広域化・民営化を視野に検討を進めていく必要がある。