経営の健全性・効率性について
経営の健全性を表す指標のうち、「経常収支比率」、「累積欠損金比率」、「流動比率」、「料金回収率」、「給水原価」の平成26年度数値については新しい会計基準への移行に伴う影響を受けています。これらのうち「流動比率」については、第4期拡張事業において建設改良費の財源の多くを、国などからの借入金である企業債に依存してきたことから、企業債残高の割合が高く、類似団体平均値に比べて悪くなっています。しかし、「企業債残高対給水収益比率」については、高い数値であるものの減少傾向となっています。当市の経営の健全性については、有収水量1立方メートルあたりどれだけの費用がかかっているかを表す「給水原価」が類似団体平均値より低く、その費用がどれだけ料金収入で賄われているかを表す「料金回収率」についても、100%を上回っています。また、複数年度にわたって累積した損失である「累積欠損金比率」が0%であることから経営の健全性は、類似団体より高いと考えています。施設の利用状況等を判断する「施設利用率」は、類似団体平均値同様低減傾向であるものの、施設の稼働が収益につながっているかを判断する「有収率」については、類似団体平均値に比べて高い約95%を維持しています。このことから、漏水等が少なく、水道施設や給水装置を通して給水される水量が類似団体に比べて効率よく収益化されていると言えます。
老朽化の状況について
本市の水道施設の多くが、平成2年度に着工した第4期拡張事業以降において整備したものであるため、老朽化の度合いを示す「有形固定資産減価償却率」、「管路経年化率」ともに類似団体平均値と比較すると低いものとなっています。しかし、これら指標の経年的な動向を見ると、各指標の数値とも上昇傾向であることから、老朽化が徐々に進んでいると言えます。また、管路の老朽化に関係の深い「管路更新率」については、類似団体平均値を上回っているものの、低水準であり、年々低下しています。類似団体平均値では、近年1%を下回った状態が続いており、本市でも平成26年度に1%を下回りました。この更新率では、管路全体を更新する為に100年以上の年月が必要となります。このため、今後は管路の老朽化が深刻な状況となることが見込まれます。
全体総括
経営の健全性について見てみると、安定的な経営状態に見えますが、過去の施設整備において財源の多くを企業債に依存してきたことから、「企業債残高対給水収益比率」が類似団体平均値と比較して非常に高い等、潜在的に脆弱な財務体質になっています。また、老朽化の状況についても、類似団体平均値と比較すると良好な状態に見えますが、「管路更新率」が低水準なことから、施設の老朽化を防ぐためには多額の投資が必要となります。今後数年は安定的な経営が見込まれますが、水需要の減少に伴い、給水収益が減少傾向を示していることから中長期的な視野に立った更新計画や財源確保策を早期に検討する必要があると考えています。