経営の健全性・効率性について
平成25年度の料金改定(引き下げ)により経常収支比率及び料金回収率が低下していたが、給水量の増加により用水供給事業の平均的な水準よりも高くなった。流動比率は平成26年度に大きく低下しているが、会計基準が変更されたことによるものであり、平均的な水準である。企業債残高対給水収益比率は、平均より高い傾向であるが、これは水源開発に伴う負担額が大きかったことによるものである。また、累積欠損金もなく、企業債残高対給水収益比率も減少傾向にあることから、料金改定後も概ね健全な経営状態を保っている。一方で、本県の水源は需要の多い地域から遠隔にあり導水管延長が長く、給水区域も給水量に比べ広範囲で送水管延長も長いため費用のうち資本費(減価償却費及び企業債利息)が割高になっている。また、現時点では建設当初ほど需要が伸びなかったため施設利用率が低い。このため給水原価が用水供給事業の平均よりも高くなっている。有収率は、用水供給事業の平均より低いが99%を超えており問題のない水準である。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率及び管路経年化率は用水供給事業の平均より高い水準にあり年々増加している。これまでは、耐用年数が短い機械設備等を中心に施設更新に取り組んできたことによる。管路は更新率が0%の年度が多く更新はあまり進んでいないといえる。また、浄水池等のコンクリート構造物及び機械設備については、計画的な点検や修繕により長寿命化を図ることとしている。
全体総括
奈良県では用水供給事業を行う県営水道と市町村水道を一体で「県域水道」としてとらえ、県域全体で水道資産の効率化を図る「県域水道ファシリティマネジメント」に取り組んでいる。具体的には、浄水場を有する市町村が老朽化した浄水場を更新して自己水を維持するのか、浄水場を更新せず県営水道に水源を転換するのかについて、費用対効果を踏まえ市町村とともに検討し、転換の意向がある市町村については県営水道への転換を進めている。平成31年度までに給水区域内での占有率を53%から56%まで高めることとしている。また、施設更新の際には将来の水需要に見合った規模にダウンサイジングを行い効率的な施設運用に取り組んでいる。なお、管路更新計画に基づき管路更新が本格化すると長期にわたり多額の財源が必要となるため、今後は自己資金を活用して企業債の借入を最小限にとどめることにより、企業債残高の抑制に努め、将来の負担軽減を目指す。