経営の健全性・効率性について
令和2年度の経常収支比率は、100%を確保しており経常的な費用を収入で賄えている。また、短期的な支払い能力を示す流動比率も100%を超えており、安定した経営を行うことができているが、両指標とも類似団体平均値と比べ低い水準にあり、十分とは言えない状況である。企業債残高対給水収益比率は、1年間の料金収入に対してどれくらい企業債(借金)の残高があるかを示す指標である。近年、老朽施設の更新・耐震化を積極的に進めているが、その財源の大部分を企業債に頼っているため、ここ数年は類似団体平均値を上回り年々悪化が続いている。これは、将来に先送りしている負担が徐々に増加している状況である。給水原価は、水1㎥を供給するのにかかる費用である。令和2年度は費用が減少したことにより、類似団体平均値を下回った。これにより料金回収率は100%を確保でき、水を供給するために必要な費用を料金収入で賄うことができた。しかし、類似団体平均値と比べ低い水準にあるのは、料金水準が類似団体と比べ低いためと考えられる。施設利用率は、施設の配水能力のうち利用している割合を示す指標で、減少傾向が続いている。これは、水道施設の多くが高度成長期に整備後、人口の減少等により使用水量の減少が続いており、それに対し施設規模の適正化が進んでいないためである。有収率は、100%に近いほど水道施設から供給した水が収益につながっていると言える。漏水調査や管路の修繕等の取り組みにより、類似団体平均値と比べて高い水準を保つことができている。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は、水道施設の老朽度合いを示す指標である。類似団体平均値と比べ高い水準にあり、老朽施設の更新を進める必要がある。管路経年化率は、法定耐用年数の40年を経過した管路の割合を示す指標である。令和2年度末時点で、約3分の1の管路が法定耐用年数を超過しており、類似団体平均値と比べ老朽化が進んでいる状況である。管路更新率は、管路全体のうち当該年度に更新を行った割合を示す指標である。概ね類似団体平均値よりも低い水準である。本市では高度成長期に集中的に整備した管路の更新時期が順次到来しているが、全てを更新するためには膨大な財源が必要となる。このため、口径の大きい重要な管路から優先的に更新を行っているが、更新事業の予算に対して更新できる管路延長が短く、更新があまり進まない要因となっている。
全体総括
人口減少等に伴い料金収入の減少が続いているが、施設の老朽化が進んでいるとともに、災害への備えも求められており、近年施設の更新・耐震化に積極的に取り組んでいるところである。しかし、市内全域に膨大な水道施設があるため、その更新はあまり進んでいない状況である。また、更新費用の財源は、企業債に頼っているため、将来経営の負担となってくることが予想される。令和元年度に策定した本市水道事業ビジョン及び経営戦略の計画に沿って、アセットマネジメント手法に基づく施設の統廃合、ダウンサイジングを行い更新費用の削減を図っていくとともに、その財源の確保について、今後適正な料金水準の検討を行い、企業債と料金収入のバランスを考慮していくこととしている。これにより、経営基盤の強化を図り、老朽施設・管路の更新及び耐震化を着実に実施していくものである。