経営の健全性・効率性について
平成29年度の経常収支比率は、100%を確保しており経常的な費用を収入で賄えている。しかし、前年度から大幅な悪化となっているのは、退職に係る職員給与費や企業団からの水の購入費用が一時的に増加したことによる。給水原価は、1㎥の水を供給するのに必要な費用であるが、平成29年度に大幅に増加しているのも同じ要因による。また、給水原価が増加したことにより、料金回収率が100%を下回っている。これは、水を供給するために必要な費用を料金収入で賄うことができていないことを示している。短期的な支払い能力を示す流動比率は100%を超えており、安定した経営に問題はないが、類似団体平均値と比較すると低く、十分とは言えない状況にある。近年、老朽施設の更新や耐震化を積極的に進めているが、その財源のほとんどを企業債(借金)の借入れによって賄っていることから、企業債残高対給水収益比率が年々増加している。ここ数年は類似団体平均値を上回って悪化が続いており、将来に先送りしている負担が徐々に増加している状況にある。上水道施設の多くは高度成長期に整備したものであるが、その後人口の減少等により使用水量の減少が続く一方、施設規模の適正化が進んでいないことから、施設利用率の低下が続いている。有収率は、100%に近いほど水を効率的に供給できていると言えるが、漏水調査や管路の修繕等の取り組みによって、類似団体平均値と比べて高い水準を保つことができている。
老朽化の状況について
本市では昭和40年代から50年代にかけて集中的に水道管路を整備しており、これらが順次耐用年数の40年を経過することにより、管路経年化率が年々増加している。類似団体平均値も増加しているが、それを上回るペースで増加しており、漏水事故等の発生が懸念される。平成23年度に本市水道ビジョンを策定し、管路の更新を積極的に進めているが、市内全域には700kmを超える管路があり、管路更新率で見るとその割合は小幅にとどまっている。有形固定資産減価償却率が平成26年度に大幅に上昇しているが、これは地方公営企業の会計制度改正の影響によるものである。
全体総括
人口減少等に伴い料金収入の減少が続く一方、施設の老朽化が進んでいる。従来は投資の抑制を図っていたが、近年施設の更新に積極的に取り組んでいるところである。しかし、市内全域に膨大な水道施設があるため、その更新はあまり進んでいない状況である。また、更新事業の財源は、企業債の借入れによって賄っているため、将来経営の負担となってくることが予想される。現在、本市では水道ビジョン及び経営戦略の見直し・策定を進めており、その中で水道施設の規模の適正化や更新の優先順位の見直しを行うとともに、その財源の確保について料金水準の適正化も含めて検討を行う予定である。これにより、経営基盤の強化を図り、老朽施設・管路の更新及び耐震化を着実に実施していくものである。