経営の健全性・効率性について
経営の健全性については、①経常収支比率及び⑤料金回収率が平成27年度の水道料金改訂により低下しているものの、ともに100%を超えていることから、収益性は確保されている。②累積欠損金比率については、近年、累積欠損金が発生しておらず、経営の健全性は確保されている。また、④企業債残高対給水収益比率については、平均的な水準であり、内部留保資金の活用による新規企業債の発行抑制等により企業債残高は減少している。③流動比率については、平成26年度の会計基準の見直しに伴い比率が低下したものの、100%を超えており、かつ、現金預金の比率が高いため、短期債務に対する支払能力も良好である。効率性については、⑦施設利用率が約48%と類似団体の平均値より低くなっているが、需要量が増加する夏季においては約73%に達する施設があることから、施設の故障により設備の能力が低下しても27%の余裕があることは、「安全・安定」供給に必要な施設規模となっている。また、⑧有収率は、類似団体の平均値より低くなっているが、概ね97~98%で推移していることから、施設の稼働が十分に収益に繋がっていると考えられる。なお、⑥給水原価が類似団体の平均値より高くなっているのは、他県に比べて用水供給地域が広範囲かつ水源から遠く、地形的にも起伏があるため施設整備費が割高となることや、施設利用率が低いためである。
老朽化の状況について
法定耐用年数の長い土木施設はこれから更新時期を迎えるが、法定耐用年数の短い電気機械設備は適宜更新しており、これが①有形固定資産減価償却率の低い伸び率として表れている。なお、平成26年度の有形固定資産減価償却率の大きな伸びは、みなし償却の廃止によるものである。②管路経年化率の伸びについては、最も古い時期に埋設された送水管が法定耐用年数を迎えつつあることを示すものである。③管路更新率は、類似団体の平均値より低くなっている。これは法定耐用年数とは別に厚生労働省が提示している実使用年数を参考にして設定した更新実施の時期に達していないことによるものである。今後は古い管路の更新をはじめ、耐震化も含めて長期経営計画に基づき計画的に更新を行っていく。
全体総括
上記動向をもとに総合的に判断すると、平成27年度の料金改定により収益は大きく減少したものの、今後も概ね現行の状態が維持できると考えられ、経営に大きな影響を与える要因は認められないため、安定した経営が継続できると考えられる。引き続き、内部留保資金の活用による新規企業債の発行抑制に努める等、後年度における利息負担の軽減に取り組むとともに、電気機械設備改良の際には高効率のものに更新するなど、費用の削減に努めていく必要がある。あわせて、施設の長寿命化等によるライフサイクルコストの低減など更なる費用の削減を図りながら、アセットマネジメント等により長期の収支バランスを勘案した計画的な施設改良に取り組むことで、将来にわたり「安全・安定」供給に努める必要がある。