経営の健全性・効率性について
近年の経営については、経常収益が経常費用を上回る状況が続き、経常収支比率が100%を超えていることから、収益性は確保されている。当指標が類似団体平均値より高い主な要因は、高金利企業債及び水資源機構割賦負担金の借換及び繰上償還による支払利息の減少で経常費用が減少したことが考えられる。このことは、料金回収率を押し上げる要因とはなるものの、内部留保資金の活用による新規企業債の発行抑制とあわせて、企業債残高対給水収益比率の低下に寄与している。また、流動比率についても、平成26年度より会計基準の見直しにより比率が低下したものの100%を超えており、かつ、現金預金の比率が高いため、短期債務に対する支払能力も良好である。なお、累積欠損金比率については、平成22年度及び平成23年度に一元化に伴う譲渡にかかる特別損失を計上したため赤字に転じたが、上記による経営の結果、平成25年度には累積欠損金を解消することができた。効率性については、施設利用率が概ね5割と類似団体平均値と比較すると低くなっているが、夏季の渇水時期等には施設能力の約8割の稼働状況に達することもあり、年間を通じて勘案すると、「安全・安定」供給に必要な施設規模となっている。また、有収率は、近年では概ね97~98%で推移していることから、施設の稼働が十分に収益に繋がっていると考えられる。なお、給水原価が類似団体平均値より高くなっているが、他県に比べて用水供給地域が広範囲かつ水源から遠く、地形的にも起伏があるため施設整備費が割高となることからである。
老朽化の状況について
法定耐用年数の長い土木施設はこれから更新時期を迎えるが、法定耐用年数の短い電気機械設備は適宜更新されており、これが有形固定資産減価償却率の低い伸び率として表れている。なお、平成26年度の有形固定資産減価償却率の大きな伸びは、みなし償却の廃止によるものである。また、当県は平成になってから運用を開始した比較的新しい事業もあるため、管路経年変化率や管路更新率といった老朽化の状況を示す指標については、類似団体と比較してやや低くなっている。しかしながら、管路の劣化は年々進むものであり、今後は老朽化の進んでいる創設時期(昭和46年~)に埋設された古い管路をはじめ、比較的新しい事業にかかる管路についても、耐震化も踏まえて計画的に更新していくことが重要である。
全体総括
上記動向をもとに総合的に判断すると、平成27年4月の料金改定により収益が減少する要因があるものの、今後も概ね現行の状態が維持できると考えられ、経営に大きな影響を与える要因は認められないため、安定した経営が継続できると考えられる。引き続き、内部留保資金の活用による新規企業債の発行抑制に努める等、後年度における利息負担の軽減に取り組むとともに、電気機械設備改良の際には高効率のものに更新するなど、費用の削減に努めていく必要がある。あわせて、施設の長寿命化等によるライフサイクルコストの低減など、更なる費用の削減を図りながら、アセットマネジメント等により長期の収支バランスを勘案した計画的な施設改良に取り組むことで、将来にわたり「安全・安定」供給に努める必要がある。