経営の健全性・効率性について
経常収支比率は黒字で全体として健全性を確保しており、特にここ数年は支出削減等の経営努力により数値が上昇傾向となっています。しかしながら類似団体と比較すると低い水準にあるのは毎年度固定的に経常費用の約60%を占める受水費及び減価償却費の影響であり、財政の弾力性が高いとは言えない状況です。料金回収率についても同様で、この固定費用により給水原価が押し上げられています。これ以上の数値の改善には経常費用を下げるか、給水収益を上げるかしかありませんが、料金については平成23年度改定で隣接地域である東京都水道局とほぼ同水準まで値上げしており、再度の値上げにより供給単価を上げることは、水道利用者の理解を得にくいと考えています。指標数値を良好な水準に保つためには費用の圧縮に努め、給水原価の上昇を抑える必要があります。また流動比率を上げ、保有資金の残高を増やすためには、積極的な補助金や企業債の活用、又はより有利な条件での資金運用を検討する必要があると考えます。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は類似団体と同様に上昇傾向にあり、償却資産全体として減価償却のペースが更新ペースを超えていると言えます。管路経年化率は、類似団体と比較すると高い水準で推移しているもののほぼ横ばいとなっており、これは「配水管(40㎜以下)更新計画」に基づき耐震性に劣る古い管路の更新を行っていることにより、耐用年数を超えた管路について一定のペースで更新できていることの表れと言えます。管路更新率については下降傾向で、平成27年度は類似団体平均を下回る結果となりました。これは平成22年度の東京都分水料金改定を境に管路更新事業費と工事施行延長が減少したことによります。この数値の動きは近年の資金保有額の減少傾向とも合致しており、数値の改善には十分な資金を確保し、管路の更新ペースを上げていく必要があります。
全体総括
経営状態の健全性の維持及び改善の方策としては、当面は料金改定には頼らず、経営努力による費用圧縮及び資金確保に主眼を置きます。人件費及び物件費の上昇を抑制し、また積極的に補助金や企業債を活用し、資金を確保することにより、老朽化施設の更新財源としていきます。また、将来にわたって、平時のみならず災害時や事故発生時においても水道水を安定して供給できるよう、早期に東京都営水道との一元化を図ります。