経営の健全性・効率性について
本市では、90%以上を県受水に依存しているためコストが割高となり、⑥給水原価が類似団体・全国平均を大きく上回り、厳しい業務運営を求められる。また、令和2年度のコロナ禍における巣篭もり需要の反動で給水収益が大幅に減少した影響で①経常収支比率、⑤料金回収率がともに減少した。しかしながら、100%超を維持するとともに、②累積欠損金比率は0%となっており、健全な経営状況にある。④企業債残高対給水収益比率については、類似団体・全国平均を大きく下回り、③流動比率についても高い割合で推移しているため、債務残高が少なく、支払能力を十分確保できている。⑧有収率については、年度別の比較において安定しているとともに、類似団体・全国平均を大きく上回っている。一方⑦施設利用率については、経年で比較して最も低い数値となり、類似団体と比較しても下回ったことから、配水量の減少傾向が続く中で、施設の一部が適正に利用されていないことが認められる。今後、現状の指標の数値を維持するためには、施設更新時に適正な需要予測に基いた規模とする必要が出てくる。また、さらなる経常収支比率の向上を目指し、現在より健全性・効率性に優れた事業運営に努める。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率、②管路経年化率及び③管路更新率をそれぞれ類似団体・全国平均と比較したところ、①は下回っているものの、②は大幅に上回っている。これは、昭和40年代から50年代初頭にかけて整備した管路が近年更新時期を迎えているため、管路を中心とした資産全体の老朽化が年々大きく進んでいることを示している。一方③については、高い割合で推移しており、引き続き管路更新を積極的に進めていることが見受けられる。今後も、アセットマネジメントによる管路更新計画に基づき長期的な視点から適正に施工することにより事業費を平準化し、③管路更新率の安定化と高率化を図るとともに①及び②の低減化に努める。
全体総括
分析の結果、年度別・類似団体・全国平均と比較した場合、一部に劣っている項目が見受けられるものの、全体としては健全な経営状況が維持されているものと考える。しかしながら、今後については、不安定な社会情勢の中、人口減少や水需要の減少傾向が予想され、収益の大きな増加を期待することは難しい。また、老朽化した配水施設や管路の更新、耐震化対策など、既存設備の更新整備等に多額の投資が必要となり、更なる経費の節減や経営改善に向けた取り組みが必要となる。そこで、令和3年度に、既存の「尾道市水道事業ビジョン」を見直し、「尾道市上下水道事業ビジョン」を策定した。今後はその計画に基づき、コスト意識に徹した経費節減と慎重かつ効率的な事業経営、適正規模の施設更新に取り組み、安全で良質な水の安定供給に努める。