経営の健全性・効率性について
当市の水道事業における平成28年度の経営状況は前年度と比較すると、「経常収支比率」や「流動比率」などの数値が向上しており良好な結果を示している。しかし、類似団体と比較すると「経常収支比率」は前年度と比較すると上向いてはいるが、数値としては類似団体の平均値に届いていない。同様に「流動比率」、「料金回収率」も平均値を下回っており、決して余裕があるとは言えない状況である。この理由は、当市の浄水場設備が更新時期に入っているためである。関連設備が耐用年数を超えており、管路の更新と併せて設備の更新も行っている。その結果資金の繰出しが多くなり流動資産は大きく減少することとなっている。また、「企業債残高対給水収益比率」が大きく上昇を示している。当市は平成27年度から企業債の借入を再開しており、その額は対象事業の100%としているため償還額を上回っている。給水収益が減収を続けていることもあって、「企業債残高対給水収益比率」は平成28年度から平均値を上回ってしまった。施設の更新時期にあっても、企業債に頼りすぎず、水道料金を主として更新費用を賄えるようにするなど、経営状況に見合った事業展開としなければならない。
老朽化の状況について
当市の水道事業は、「管路経年化率」についてここ数年大きな変動もなく、一定の数字を示している。これは「管路更新率」に表れているように、老朽化した管路を含めて既設管の更新を積極的に行っているためである。「有形固定資産減価償却率」は、平均と比較すると低い数値を示しているが、管路の更新をすすめていることにより管路の経年が少ないこと、また浄水場の設備などの機械設備が耐用年数を迎え、更新していることから、こうした傾向にあると考えている。このように、当市は他団体と比較して高い「管路更新率」ではあるが、企業債と内部留保資金の投入による高い更新費用であることから、財政と投資の試算を均衡させ、将来的に安定した水道施設設備の資産維持に努めていかなければならない。
全体総括
近年、当市の水道事業は、単年度の経営状況はゆるやかに良好な状態になりつつ、施設設備の更新を進めている。しかし、「企業債残高対給水収益比率」が上昇傾向を示しており、将来の負担を増やさないためにも、企業債に頼りすぎない経営が望まれる。管路の経年化については、現状の「管路更新率」を維持していければ、耐用年数以内で全てを更新できるサイクルになるが、内部留保資金の減少と企業債残高の増加を見ると現在の更新事業ペースは維持できない。恒久的に水道事業が維持できるような財政計画と投資計画に取り組んでいく必要がある。安定した経営状況を維持しつつ管路等の更新を行い、安全安心な水道水を供給できるようにこれからも企業努力を行っていきたい。