経営の健全性・効率性について
当市水道事業の経営状況は、「経常収支比率」が黒字経営である100%以上を示す一方で、率の減少が続いている。この原因として、全体の収益に対する給水収益の比率が低いことが挙げられる。当市の「料金回収率」は、平均値はおろか100%をも満たしてはいない。そうであるにもかかわらず「経常収支比率」が黒字を示しているのは、給水収益以外の収益で費用をまかなっているからである。しかし、「経常収支比率」の減少が示しているように、給水収益以外の不確実な収益に頼っているようでは、経営は安定しない。そのため、水道事業の財源の基本である給水収益の増益こそが、経営安定の第一の手段であると考える。また、当市は、平成26年度から、新たに資金の借り入れを行っている。現時点においてすぐに問題になることはないが、「企業債残高対給水収益比率」の上昇が続くことが考えられる。膨れていく企業債残高に対して、給水収益が減益を続けていけば、経営を圧迫していくことになる。これを抑えるためには、やはり給水収益の増益が求められる。なぜなら、比率が低くなるだけではなく、収益が増えれば、借り入れる資金を抑えられるためである。当市の他の指標を見てみると、「給水原価」は平均値より低く、「有収率」は高い数値を示していることから、適切な料金水準に引き上げれば「料金回収率」は改善されることが予想できる。どの程度の料金水準であれば経営の安定化が可能か、また施設の更新に必要な資金の確保が可能か、検討していく必要がある。
老朽化の状況について
当市水道事業は、災害時における断水や漏水などを未然に防ぐため、古い管路の布設替を含めた管路の耐震化事業を推し進めている。高い「管路更新率」が示しているように、管路の入れ替え工事は着実に推進している。積極的な工事の進捗により、「有形固定資産減価償却率」は低くなるが、これは資産が新しいものに変わっているからである。耐用年数を超えた管路がどれだけあるのかを示す「管路経年化率」は、古い管路が新しい管路に変わっていることから低い数値で推移している。
全体総括
当市水道事業は、経営は数字上黒字ではあるが、安定性を欠いている状態である。収益の根幹である給水収益をいかに確保していくかが今後の課題である。老朽化の状況については、管路の耐震化を含めた更新工事を多く行っているため、「管路更新率」などで効果的な数値を示している。その一方、経営状況を鑑みると、財源確保に課題を残すため、一定の更新率を維持しつつ、計画的に事業を推進していきたい。水道事業の健全な企業運営を継続させることが、現在はもちろん、将来の市民のためでもある。より安定した経営状況を実現できるように邁進していきたい。