経営の健全性・効率性について
水道本来の事業活動に支払利息などの財務活動の要素を加えた「①経常収支比率」は100%を超え、経常損益は黒字を確保するとともに、平成4年度から24年連続で純利益を計上していることから、本県の経営状況は安定していると言える。平成6年度以降、累積欠損金は発生していないため「②累積欠損金比率」は0%であり、健全経営を維持している。「③流動比率」は、短期債務に対して十分な支払能力を有しているとされる、200%の水準を概ね確保している。「④企業債残高対給水収益比率」は類似団体と同水準であるが、比率は毎年減少している。その主な理由は償還に伴う企業債残高の減少による。企業債残高は平成2年度の2,761億円をピークに減少し、平成27年度末では半減の1,364億円となった。本県は、類似団体の中で給水能力、総送水量が第1位であり、そのスケールメリット等から「⑥給水原価」は低い水準にある。「⑤料金回収率」は100%をやや超える水準であり、「⑥給水原価」と比較して「供給単価」は適正水準であると言える。水需要の減少により「⑦施設利用率」は減少傾向である。現在、施設の予備力を有効活用し耐震化工事を行っているが、水需要にあわせた施設規模となるよう、今後は施設の更新時期に合わせてダウンサイジングを行っていかなければならない。本県の「⑧有収率」は水道施設を適正に維持管理していることにより概ね100%で安定している。
老朽化の状況について
「①有形固定資産減価償却率」は類似団体と同水準である。水道施設や送水管路などの有形固定資産は、古いもので稼働開始後48年以上が経過しており、この指標値は上昇傾向にある。また、「②管路経年化率」は、事業創設時に布設した管路が既に法定耐用年数を経過したため、類似団体と比べて高くなっている。「③管路更新率」は、0.33%と前年度比で0.43ポイント減少した。これは、平成24年度から実施している更新工事の完成延長が年度により異なるため、管路更新率は年度により差が生じることによるものである。管路の更新については、市街化された区域で、いかに効率よく更新を行っていくかが課題である。今後、経年化の進む水道施設や送水管路等のアセットマネジメントを実施することにより、施設の健全度を適切に評価し、健全経営を維持しながら、効率的かつ計画的に更新等を進めていく必要がある。
全体総括
以上のとおり、これまでのところ、経営の健全性・効率性はいずれも概ね良好な状況である。企業債残高等の外部負債の削減にも努め、財務内容の健全化が進んでいる。しかし、節水型社会や人口減少の進展に伴い、収益の源である水需要は平成13年度の一日平均送水量186.4万㎥をピークに、平成27年度には173.9万㎥と減少傾向にあり、施設の効率性が低下傾向にある。また、老朽化した施設や管路の更新に伴う建設費用の負担が経営を圧迫することが見込まれる。そのため、今後の水需要を見据え、浄水場の施設規模の最適化(ダウンサイジング)を図ることで、適切な施設利用率を維持し、サービス水準を低下させることなく、効率的な事業運営を行っていく。また、引き続き維持管理コストや建設コストの縮減を徹底していくとともに、水道施設や管路を適切に維持管理し、健全経営を維持できるよう努めていかなければならない。