経営の健全性・効率性について
①経常収支比率が前年度より悪化した主な要因は、給水収益と加入金収入で約18,000千円減少したことと、退職給付費が約68,000千円、減価償却費が約30,000千円増加したことによるものである。今後についても、給水収益や加入金が減少傾向の中で、修繕費、減価償却費、支払利息等は施設の老朽化や更新工事に伴い増加していく見込みであるため、同比率の大幅な向上は見込めない状況である。⑥給水原価が平均より非常に悪いのは、自己水源を持たない100%受水団体であることや、人口密度が低く配水管効率が悪い事などが影響していると考えられる。これまで事務の効率化による人員削減や委託料見直し等で徐々に向上してきていたが、当企業団の費用構成上、経常費用に占める受水費の割合が約50%、減価償却費が約25%と、大部分が固定化されており、特に受水費は当企業団では直接改善出来ない部分であるため、今後も同様に推移していくと考えられる。⑤料金回収率が平均より悪いことについては、上述した給水原価の影響に加えて、昭和59年から水道料金体系を改定せずに維持してきたことが挙げられる。水需要が減少していくにもかかわらず、老朽化施設は増加していくという中で、健全経営を持続させていくためには、継続的な経営改善努力は当然のことであるが、適切な水道料金体系の設定も必要になってくるものと考えられる。⑧有収率が過去3年間と比較して大幅に悪化している理由については、記録的猛暑の影響で、水質管理のためによるものが大きな要因である。
老朽化の状況について
老朽化の状況を示す指標については、すべての指標で類似団体平均より悪い結果となっているが、要因は、財政状況を改善するために工事を抑制してきたことによるものである。特に悪い指標である③管路更新率については、1%ですべての管路を更新するのに100年かかるという目安になるが、過去5年間の最高値で0.49%である。当企業団の管路総延長は約1,500kmで、その内経年管が約300kmあるが、現状は年間5km程度しか更新出来ていない。更に今後10年間で法定耐用年数を超過する配水管が約300km増加する予定であるため、管路更新率の向上を図り、有形固定資産減価償却率と管路経年化率の更なる悪化を防ぐ必要がある。
全体総括
単年度の収支に関する指標は、平均より悪い指標が多いものの、危機的な状況というわけではなく、最低限の数値は維持出来ている。また、企業債残高も少なく、短期的な債務に対する支払能力も十分に有しており、経営の健全性・効率性の面については、現時点では比較的良好な状況にあるということがうかがえる。一方で、老朽化の状況を示す指標においては、すべての指標が平均以下であることから、早急に老朽化した施設の更新工事に取り組んでいかなければならない。そのためには、更新費用の財源として、内部留保資金だけではなく、企業債も活用していく必要があるので、経営の健全性を示す指標も全体的に悪化していくことになるため、これらの指標を複合的に分析し将来の数値目標を定めて、更新工事を進めていく必要がある。