経営の健全性・効率性について
①経常収支比率が前年度より良化した主な要因は、給水収益が38,000千円増加し、退職給付費が64,000千円減少したことによるものである。今後は、給水収益や加入金が減少傾向の中で、修繕費、減価償却費、支払利息等は施設の老朽化や更新工事に伴い増加していく見込みであるため、同比率の大幅な向上は見込めない状況である。④企業債残高対給水収益比率は、若柴配水場更新工事に伴い、H29に8年ぶりに起債をしたため、約14ポイント悪化しているが、類似団体平均と比較すると依然として非常に良く見える。これは、財政状況改善のため工事を抑制し起債をしてこなかったためであるが、今後は更新工事が増えていくことや、世代間負担の公平性を考慮して、適宜起債を充当していく必要がある。③流動比率は前年度と比較して良化しているが、これは、現金預金の減少が少なかったこと、繰越工事の前払金が多かったこと、翌年度企業債償還元金の減少等によるものである。⑥給水原価が平均より非常に悪いのは、自己水源を持たない100%受水団体であることや、人口密度が低く配水管効率が悪い事などが影響していると考えられる。これまで事務の効率化による人員削減や委託料見直し等で徐々に向上してきているが、当企業団の費用構成上、経常費用に占める受水費の割合が約50%、減価償却費が約25%と、大部分が固定化されており、特に受水費は当企業団では直接改善出来ない部分であるため、今後も同様に推移していくと考えられる。
老朽化の状況について
老朽化の状況を示す指標については、すべての指標で類似団体平均より悪い結果となっているが、要因は、財政状況を改善するために工事を抑制してきたことによるものである。特に悪い指標である③管路更新率については、1%ですべての管路を更新するのに100年かかるという目安になるが、過去5年間の最高でも0.49%である。当企業団の管路総延長は約1,486kmで、その内経年管が約270kmあり、特に早期の布設替が望ましい石綿管も約50km残存しているが、現状は年間約2~5km程度しか更新出来ていない。更に今後10年間で法定耐用年数を超過する配水管が約300km増加する予定のため、管路更新のペースアップを図り各指標の更なる悪化を防ぐ必要がある。
全体総括
単年度の収支に関する指標は、平均よりは悪くなっているものの、危機的な状況にはなく、経年で比較すると維持・良化している。また、企業債残高も少なく、短期的な債務に対する支払能力も十分に有しており、有収率も向上していることから、経営の健全性・効率性の面においては比較的良好な状況にあることがうかがえる。しかし一方で、老朽化の状況を示す指標はすべて平均以下であることから、計画的に進めている配水場更新工事や要望に伴う配水管布設工事を実施しつつも、配水管布設替工事についても早急に取り組んでいかなければならない。そのためには、起債を多く充当していくことになるため、経営の健全性を示す指標については悪化していくことになるが、これらの指標を複合的に分析し将来の数値目標を定めた、更新・財政計画を策定し実行していく必要がある。