経営の健全性・効率性について
経常収支比率及び料金回収率のいずれも必要とされる100%給水収益で給水に係る費用が賄えていることがわかる。流動比率は100%も無いことから支払能力に問題はない。企業債残高対給水収益比率については、類似団体の平均を下回っており、かつ当面、企業債の借入予定はなく、健全である。給水原価が類似団体のそれに比べ高いのは、資本費の高さが原因となっている。資本費の高さは、将来の近隣事業体の統合や、右肩上がりの人口増加を想定した施設設計だったこと、さらにはエリア内の人口密度が低いことなどを要因としている。また、施設利用率においても給水人口密度が低いこともあり、効率性は良いとはいえない。将来の近隣事業体の統合や施設設計時に想定していた人口増加が実現せず、施設利用率は、長年低い水準に留まっている。今後の人口減少問題により更なる低下も危惧されているところである。有収率が全国平均値を下回っているのは、当企業団には水道事業へ受け渡す配水池が無く送水管と配水管を直接接続する送水形態を採っており、送水施設である調整池を出たところで配水量を捕捉し、送水ロスを含んだところで有収率を算出しているためであり、問題視すべき点とはいえない。
老朽化の状況について
管路経年化率をみると法定耐用年数を超えた管路はなく早急に更新が必要な状況にあるわけではないが、有形固定資産減価償却率は65%を超えており全国平均より高い比率であることから他事業体より浄水関連施設等の老朽化が進んでいることがいえる。今後は、策定済みの50年間での更新計画に基づき、計画的に更新を行うこととしており、令和2年度においては、浄水施設の基幹設備更新事業が完了し、新たに送水管更新事業に着手した。
全体総括
当企業団の用水供給事業は、恒常的に黒字であり累積欠損金も無いため、今のところ健全な経営状況にある。しかし、効率性は施設利用率が低い等の理由から良いとはいえず、さらには将来の人口減少による収益減が予想されている。これらの対策として、長期の更新計画に基づき、浄水関連施設及び管路のダウンサイジング、スペックダウン等を考慮した更新を行っていく。今後、人口の減少に伴い事業経営は厳しくなることが予想されるため、広域連携等について検討を行っていく。