経営の健全性・効率性について
法非適用の下水道事業は、収入が支出に不足する額は、一般会計からの繰入金により調整しているため、収益的収支比率は、100%に満たない赤字状態ではあるが、赤字で経営状況が悪いということではない。ここ5年間は、収入面では一般会計繰入金が増加し、支出面では、企業債償還金及び利息が減少しているので、同比率は増加している。企業債残高対事業規模比率が低いのは、すでに面整備が完了しており、新規借り入れがないことと、企業債残高のほぼ全額が、分流式下水道に要する経費等、一般会計が負担すべき経費であるためである。この事業は、水洗化人口が500人弱と少ないものの、一定規模の施設は必要になるため、使用料収入が少ない反面、維持管理費は割高になる。そのため、経費回収率は100%を下回っており、汚水処理原価も高い範囲で推移している。しかし、類似団体の平均値よりは良好な状態なので、経営状況に問題があるわけではないと考える。施設利用率は、60%に満たない低さだが、処理場の計画人口が783人であったのに対し、平成26年度末の水洗化人口が500人と3分の2に減少していること、節水意識の向上及び節水機器の普及により処理水量が減少していることが要因と考える。水洗化率については、85%を境に増減を繰り返している。これは、平成12年に整備率が100%になって以降、新規水洗化世帯は増えているものの若年層の流出等による人口減少により、水洗化人口が減少を続けていることが原因である。
老朽化の状況について
喜木津・広早処理区は平成4年、磯崎処理区は平成5年の供用開始と、比較的新しい施設であるため、管渠については軽微な修繕はあるものの、改善・更新は行っていない。一方、喜木津浄化センター及び磯崎浄化センターについては、供用開始から20年が経過していることによる機械類の経年劣化が進んでおり、老朽化している状況と言える。また、7箇所あるマンホールポンプについても同様であり、処理場とマンホールポンプの修繕・更新に要する費用は、毎年約500万円程度かかっている。平成26年度には、更新基本計画を策定し、今後、両処理場について、処理場自体を更新するか、あるいは合併浄化槽に変更するか等の検討を行うこととしている。
全体総括
経営状況については、処理区内の人口が少ないこともあり、決して効率的な経営を行っているとは言えないが、類似団体と比べれば良好な経営状態であると言える。少子高齢化と若年層の流出により、処理区内の人口は減少の一途をたどっており、今後も増加の見込みは少ない状況である。反面、施設については、年を追うごとに老朽化が進行するため、維持管理費は増高していく。このような状況で下水道事業を安定して経営していくためには、将来人口を見据えた処理場の更新を行い、維持管理費を抑えていく必要がある。また収入面では、使用料の改定が考えられるが、当地区は、現状でも公共下水道に比べて高い水準にあることに加え、平成28年度の上水道への編入に伴い、水道料金が上がるため、下水道料金の改定は困難な状況である。よって、水洗化率の向上を目指して、さらに接続依頼を進めていくしかないと考える。