経営の健全性・効率性について
経常収支比率は100%を超え、黒字を維持しており、累積欠損金は発生しておらず、類似団体と比較して健全な経営と言える。流動比率は、すべての年度で200%以上となっており、短期的な債務に対する支払能力は十分に確保できているが、類似団体の平均値と比べると低い数値となっている。これは、企業債残高が類似団体と比較して多く、償還期限が1年以内の企業債(流動負債)が多いためである。このことは企業債残高対給水収益比率にも表れており、類似団体と比較しても高い数値を示している。料金回収率は120%程度で推移しており、類似団体の平均値を超え、給水に係る必要な費用を給水収益で賄えている。また、給水原価については、地下水を水源としていることや山間部が少ないことなどにより浄水費用等が抑制できているため、類似団体と比較して低い水準にあると考えられる。施設利用率は、平成30年度の施設更新においてダウンサイジングを実施したことにより数値が上昇しているが、類似団体の平均値を下回っており、今後も適正な施設規模を把握し、施設のダウンサイジングを検討していく必要がある。有収率は92%前後で推移しており、類似団体の数値を上回っている。これは、定期的な漏水調査の実施や管路更新による漏水量の減少、適切な施設管理による効果が現れていると考えられる。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は、令和2年度に施設の更新工事が完了したことにより、一時的に数値が改善しているが、類似団体と同様に償却対象資産の減価償却が進んでいる状況にある。管路経年化率は、類似団体より低い数値で推移しているものの、年々増加傾向にあり、管路の老朽化が進んでいる。管路更新率については、当市上下水道ビジョンにおいて設定している耐震管布設9.5km/年を目標に毎年更新を行っており(令和11年度目標値:管路全体の耐震化率42%)、類似団体の平均値を上回っている。老朽化の状況については、管路の更新は類似団体を上回るペースで進めているが、管路の経年化に対し、今後も更新を続けていく必要がある。
全体総括
各指標が示すとおり、現状においては類似団体と比較して経営の健全性や効率性が保たれているが、一方で企業債残高対給水収益比率が高い数値を示しており、今後、企業債残高を減少させていくことが課題となっている。また、将来的に事業運営の根幹をなす水需要の減少が見込まれる中で、施設の老朽化対策や耐震化など給水収益の増収につながらない事業が数多く存在している状況にある。当市では、令和元年度に経営戦略を内包した上下水道ビジョンを策定しており、計画的かつ効果的な投資と財源の確保、専門知識を有した人材の育成など、長期的展望に立った経営体制の確立が必要である。