経営の健全性・効率性について
経常収支比率は、平成26年度以降、急激に上昇しており経営状況が改善しているように見えますが、これは新会計基準から新たに発生した長期前受金の戻入収益の増加によるもので、主たる収入である給水収益は、人口減少や節水意識の高まりなどから減少傾向が長く続いています。企業債残高対給水収益比率は平成22年度から平成24年度まで新規借入を行っていなかったため減少していましたが、平成25年度以降は老朽施設の更新に取り組むために借入を再開したことで給水収益の減少と相まって上昇しており、平成27年度は前年度比3.34ポイント上昇しています。料金回収率が類似団体平均を下回っているのは、給水収益以外の旧簡易水道施設の維持管理費等にかかる繰出金や、富田林市との共同施設(浄水場)の運営経費にかかる負担金収入が多いことによるものです。給水原価については、本市はダム水をはじめとして自己水の割合が高く、高低差の多い地形条件のため浄水配水施設を多く所有していることから、減価償却費が高くなっており、元来、給水原価は高くなっています。ただし、これらの資産は開発団地からの受贈による資産が多く、平成26年度からの新会計基準適用により、長期前受金戻入収益が発生し、給水原価の算定で減価償却費から長期前受金戻入見合い額を控除することで急激に給水原価が低下しています。施設利用率が他市平均に比べて低くなっているのは、高度成長期の人口急増に合わせて施設の整備をしてきたため、現在の人口規模に対して施設規模が過大になっていることが考えられます。
老朽化の状況について
本市の有形固定資産減価償却率は50%を超えており、施設の老朽化が相当進んでいることを示しています。施設の老朽化対策等については、平成25年度に水道施設整備計画を策定しており、基幹施設の耐震化事業や重要給水施設への管路の耐震化を重点施策として、順次、更新事業を実施しています。管路経年化率が平成25年以降上昇しているのは、本市は昭和40年~50年代頃に大規模な住宅団地の開発が進み、その時期の配水管が更新時期を迎えているためです。平成27年度は前年度比9.61ポイント上昇しています。
全体総括
本市水道事業は地形の特徴から多くの施設を有しており、その多くが更新時期を迎えていることから、今後の更新投資の増加は避けられません。しかしながら、人口減少傾向も止まらず、給水収益の増収は望めない状況の中、健全経営を維持していくためには更なるコスト意識を高めて経営していく必要があります。具体的には、現在までに委託の拡大による人件費の削減や修繕引当金の積極的な活用などにより費用の削減に取り組んできましたが、これ以上の人員削減は危機管理や施設の安全な維持管理を行ううえで難しくなっています。今後は、コスト削減と併せて料金改定も視野に入れざるを得ないため、平成28年度から災害対策や施設を適切な規模に縮小することなども組み込んだ施設整備計画の見直しや経営戦略の策定などに取り組み、住民に理解を得られるよう安全で健全な経営維持に努めてまいります。