経営の健全性・効率性について
平成29年度における当市水道事業の経営について、特筆すべきは料金回収率が100%を上回ったことである。当市は、平成になってから一度も料金回収率が100%を上回ることがなかったからである。料金回収率が上回った理由のひとつは、給水原価の減少である。前年度と比較して10円も減少しているが、これは資産減耗費の減少が大きい。減少した要因は、前年度に浄水場の更新を行ったため、単純に比較しても減少していることもあるが、老朽化した固定資産を対象に更新を行っていることも理由として挙げられる。償却年数が増えるほど、資産減耗費は少額で済むからである。もう一つは、大口事業者の使用水量が高まったことにあると見込んでいる。前年度と比較して有収率は落ち込んでおり、料金回収率にとっては逆風の数値があるにもかかわらず供給単価は増加していた。これは水道料金の単価の高い大口事業者の利用水量が増加しているからである。企業債残高対給水収益比率は、企業債の借入を再開した平成27年度から増加しており、昨年度に引き続き平均値を上回っている。企業債の借入については、今が浄水場を含めた更新時期であるため仕方のないことであると考えている。しかし、平成30年度に策定した当市経営戦略でも述べているように、企業債が経営を支えているようでは将来に負担を掛けてしまうので、時期を見て企業債の残高増加を抑制するためにも借入対象を限定するつもりである。
老朽化の状況について
管路経年化率が平成29年度で大幅に増加しているが、これは市の開発事業によって採納した管路が大量にあるための、一時的な上昇であると考えている。管路更新は近年の中では一番低調であるとはいえ平均以上を示しており、ここ数年の更新ペースを維持していくことができれば、管路経年化率を平準化することができると見込んでいる。有形固定資産全体で見ても、浄水場の電気設備等の更新を行っている最中であることから未償却資産が多くなっており、今後も老朽化した資産については計画的に更新していきたいと考えている。
全体総括
平成29年度は、料金回収率が100%を超えるなど、単年度で見るのであれば良い経営状況と言える数値を示したが、流動比率は大きな上昇を示さず、支払能力に十分な余裕を持たせるまでには至らなかった。また、設備の更新を行うために、今は企業債に大きく依存しており、これを脱却して将来の負担を減らさなければならない。企業債頼りの状況から抜け出し、将来の設備更新に備えて支払能力を蓄えるためには、適正な料金設定を行う必要があるが、改定の時期等については、今後の決算状況や水需要を鑑みながら、準備と市民等への説明を十分行った上で実行したい。