経営の健全性・効率性について
ここ数年は毎年10億近く起債残高を縮小してきており、それに伴い、①収益的収支の数値は順調に上昇している。ただし黒字を表す100%には程遠い。④企業債残高対事業規模比率では最適な数値は示されていないが、起債残高が大幅に縮小しているため、類似団体の値とほぼ変わらない推移であったものがH27年度から平均値を下回る数値となっている。これは起債残高の減少による影響のみなので、使用料改定のあかつきには、更に数値は小さくなるはずである。⑤経費回収率では本来100%以上でなければ経営が成り立たないのだが、当市においては50%前後の数値であり健全経営には程遠い状態となっている。その上、⑥汚水処理単価が平均より高いことも経営悪化に拍車を掛けている。ただし処理単価が高くなってしまうのは、流域下水道による処理のため仕方が無い部分もあると思われる。当市の下水道は現在布設の途上にあり、普及率はまだまだ低いものの、⑧のとおり水洗化率は全国の類似団体に迫っている。このまま接続件数を伸ばしていきたいが、一方、人口減少、高齢化の現在、空き家の増加や経済的困難者など一定割合の未接続は避けられず、今後は頭打ちの状況になるものと推測される。これらを受け、流域下水処理場の能力は必要以上に過大なスペックになってしまっているものと思われる。
老朽化の状況について
未だ建設の途中であり、管渠についてはまだ更新は必要な時期ではない。③の管渠改善率が時折上がるのは、耐震化等の工事を行なったためである。処理場についても、流域下水道なので、当市での維持管理は行なっていない。しかし100基あるマンホールポンプについては耐用年数が過ぎたものも多数ある。現在は修繕を施しながら使用可能な限りポンプの延命をしているが、一時期に交換することは人的にも費用的にも難しいため、中・長期的な計画を立て、交換工事を行っていかなければならない。
全体総括
下水道事業自体が近代の事業であるため、経営に関する意識が自他共に希薄であることは否めない。当市においては、経営改善のため平成24年に上下水道審議会において料金改定の諮問があったものの、景気を理由に3年程度据置との回答がなされ、料金改定がなされていない。事業運営のために節減できる部分は節減してきたが、圧倒的に使用料の不足が会計を圧迫している。事業開始当初に、加入促進のための採算を度外視した料金設定が現在も影響していると思われる。経営健全化には中長期的な計画が必要であり、企業会計移行後の決算を受け、適正な料金の算出を行い、それを経営戦略に反映させていく。その中で、料金改定は2~3回程度にわたり行なわなければならないであろう。また、自治体間における事業の連携、統合なども併せて検討を進めていく。一方、建設計画も、人口減少時代を向かえ大幅に見直さなければならないと考える。