経営の健全性・効率性について
まずはじめに、笛吹市公共下水道事業は平成28年度より企業会計に移行したため、それまでの特別会計との扱いが大きく異なり、平成27年度までの数値との比較が困難であることをご了承いただきたい。下水道事業は企業債償還利子が減少していることから、経常収支の規模は毎年縮小しており、①経常収支比率もほば100%と良好な数値を示している。しかしこれには、多額の一般会計からの基準外繰入を充てているためであり、独立採算とはかけ離れた会計運営となっている。②の累積欠損金は1.36%と非常に低く良好であるが、これは会計が新しいため累積分が無いためであり、今後の数値の動向に注意するべきである。③の流動比率は類似団体を大きく下回っているが、建設改良のための起債償還の割合が高いためであり、これに見合った料金回収が行なわれていない。④企業債残高対事業規模比率では最適な数値は示されていないが、ここ数年、毎年10億近く起債残高を縮小してきており、それに伴い、順調に残高を縮小している。⑤経費回収率では本来100%以上でなければ経営が成り立たないのだが、当市においては50%前後の数値であり健全経営には程遠い状態となっている。その上、⑥汚水処理単価が平均より高いことも経営悪化に拍車を掛けている。⑦の施設利用率は類似団体とほぼ同程度の数値である。しかし一旦建設した施設は減少しないため、今後人口減少時代に入り、下水道接続者が増えても利用率が伸び悩む事が推測できる。⑧水洗化率は全国の類似団体に迫っている。このまま接続件数を伸ばしていきたいところだが、人口減少、高齢化、空き家の増加、経済的困難者など一定割合の未接続は避けられず、今後は頭打ちの状況になるものと推測される。以上から、現状の施設は投資過剰であり、今後は施設の効率的利用を検討しつつ、これに見合った料金設定を行なっていかなければならない。
老朽化の状況について
未だ建設の途中であり、管渠についてはまだ更新は必要な時期ではない。これは①の有形固定資産減価償却率にも現れている。しかし100基あるマンホールポンプについては耐用年数が過ぎたものも多数ある。現在は修繕を施しながら使用可能な限りポンプの延命をしているが、一時期に交換することは人的にも費用的にも難しいため、中・長期的な計画を立て、交換工事を行なっていかなければならない。
全体総括
下水道事業自体が近代の事業であるため、今までは建設に重きを置かれ、経営に関する意識が希薄であったことは否めない。当市においては、平成22年度に料金統一の改定を行なったのみで、事業運営を鑑みての改定が行われてこなかった。事業運営のために節減できる部分は節減してきたが、圧倒的に使用料の不足が会計を圧迫している。下水道事業全般に言えることだが、事業開始当初、加入促進のための採算を度外視した料金設定が現在も影響していると思われる。今般、平成30年度より20%増の使用料改定を行い、平成34年度にも改定を行なう予定である。平成28年度に企業会計への移行も行なわれたことから、今後は基準外繰入金に頼らない継続可能な事業運営が行えるよう、経営健全化に向け、引き続き努力が必要である。また、自治体間における事業の連携、広域化なども併せて検討を進めていく一方、建設計画も、人口減少時代を向かえ大幅に見直さなければならないと考える。