経営の健全性・効率性について
収益性を見る経営指標は近年好調で、水道料金収入も大口需要者の使用量増により若干ではあるが増加の傾向を示している。しかし、収益的支出における減額要素の一つは支払利息であり、これは平成12年度以降、平成26年度まで企業債借入が無いため減少しているが、平成27年度から借り入れを再開したことで、今後は増加していくこととなる。また、純利益の主な要因は、見込みが不確定な水道利用加入金となっていることから、必ずしも安定経営とはいえない状況にある。損益ベースでは好調に見える経営状況であるが、資金ベースでみると、企業債残高対給水収益比率が平均より上回っていることから、現金の確保を企業債に頼っている状況といえる。平成27年度から借り入れている企業債について、令和5年度までは企業債の対象となる工事費の全額を借り入れることとしており、増加の一途をたどることになるが、償還元金を賄う利益を生み出すことは容易ではないため、今後の資金確保が課題となる。
老朽化の状況について
老朽管更新事業は、その全額を企業債により実施しているが、経年化率は年々上昇している。直近5年間の更新ペースでは、更新終了まで240年かかることから、経年化率は今後も上昇することが見込まれる。現在、更新時期となっている2か所ある浄水場の更新が終了した時点から老朽管更新事業のペースを上げたいと考えている。しかし、次期の浄水場更新事業が20年周期で訪れることや、全額を企業債で賄わなければ資金を確保できなくなることなど、資金不足に陥る傾向にあるといえる。
全体総括
一見、好調に見える経営状況だが、資本造成の原資となる利益までは生み出せていない。資金の確保は、内部留保資金の取り崩しと企業債借入によるものとなっており、将来への負担を先送りしている。このため、現行の経営戦略では令和4年度に15%、令和8年度に15%の料金改定を見込んでいるが、経営戦略策定以降の水道事業を取り巻く環境は、コロナ禍における生活環境の変化等により想定外の事象もあることから、現状に合わせた時点修正を行い、将来に負担を先送りしない計画とすべきであると考えている。