経営の健全性・効率性について
収益的収支比率は、料金収入や他会計繰入金以外の収入(資本費平準化債など)に依存しているため、100%を割り込んでいますが、水洗化率向上の料金収入増加により、年々比率は好転しています。企業債残高対事業規模比率は、類似団体との比較して高い値となっていますが、資本費平準化債の最大限の活用や市債償還額を上回る新たな市債を発行しない方針を実施しており、年々比率は下落しています。汚水処理原価は、類似団体と比べ高い水準で、その大半を資本費(公債費)が占め、償還期間が30年と長期にわたっているため、資本費平準化債を活用し償還期間を先延ばして償還額の平準化を図っても、下落し難い状況です。汚水処理原価と密接な関係にある経費回収率は、類似団体と比べ低位に位置しており、水洗化率向上による料金収入により比率は逓増しているものの、当初の下水道投資が経営の効率性よりも市民の公共性を優先したため、投資額を後年度に回収できる料金体系になっていないことが要因です。近年は、各地域の地理的条件等を考慮して下水道整備(民間集中浄化槽から公共下水道の接続切替等)を進め、また、未接続家庭への啓発に努めており、類似団体を上回る水洗化率の向上に繋げています。
老朽化の状況について
管渠の耐用年数からすると、現在は緊急的な管渠の更新は必要ないと判断しています。しかしながら、過去に多量に整備した管渠の更新時期が今後一度に集中して到来すると予想され、また、更新投資は新たな供用開始による料金収入が伴わないため、現在とこれからの経営状況を見据え、計画的な対応が必要となります。
全体総括
類似団体と比較しても、良好な経営とはいえない状況で、将来の事業継続に向け早急な対応が必要です。平成29年度からの企業会計化に向けて取り組んでおり、さまざまな経営改善手法に活用できると想定しています。よって、まずは現在の移行に向けた取り組みを着実に遂行し、現状の的確な把握を行います。その後、投資と財政の両面から捉えた中長期的な戦略を策定します。今後の更新も含めた整備は、地域の実情に応じて料金で回収できる投資規模・スペックを選定し、さらに投資の平準化の取組が必要になります。その他維持管理経費の削減に取り組んでもなお料金で経費を回収できないという見通しになった場合、水洗化率向上による料金収入の増加が限界になりつつある中、適切な料金を確保するために料金体系の見直しを実施しなければなりません。