経営の健全性・効率性について
当時の飯南町では、櫛田川の水質が低下しているという現状を打開するために、いくつかの生活排水の処理方法を検討し、その一つが平成5年度に策定されました「全県域下水道構想」といわれた事業です。この構想は飯南管内でも比較的住宅の密集している粥見地区中央と柿野地区の国道166号沿線の2地区を下水道で、人家の点在する2集落は合併浄化槽で、その他については、13箇所の農業集落排水処理施設で対応するという計画でした。ところが、この計画で必要となる事業費は当時、約130億円(実質町負担額約23億円)と試算され、当時の飯南町では財政力が弱く現実的ではないことが分かったそうです。一方で、平成6年度に厚生労働省から打ち出された「特定地域生活排水処理事業」では、財政的な実質負担が非常に小さく、効果的にも飯南町に合った良い事業でした。当初、特定地域生活排水処理事業は、「水道原水水質保全」を目的として打ち出されておりましたが、その後、平成7年度から過疎地域に、平成8年度から山村振興法に基づく山村地域にも拡充され、飯南町もこの事業の対象地域となりました。この事業の内容は、一定地域内の全戸に、市町村が設置主体となって合併浄化槽の整備を行って運営していくものでした。この事業で町内全戸に合併処理浄化槽を設置するための総事業費は約29億円(実質町負担額3億4千万円)と推計され、「全県域下水道化構想事業」と比較いたしますと約100億円(実質町負担額約20億円)もの節約が可能なる試算でした。財政的にもまた、傾斜地に住宅が点在する飯南町にとっては、地形的にも、この事業は実情にあった極めて合理的な事業であり現在に至っております。飯南管内は、平成8年度より飯高管内は、平成10年度より計画的に設置きました。現在(H27.10.1)の飯南・飯高管内の世帯数は3,899世帯で、平成27年10月末の市が管理している浄化槽(戸別合併高度処理浄化槽及び設置事業型浄化槽)は、2,126基です。今後、浄化槽設置予定世帯件数は、1,388基(単独浄化槽386基、汲み取り1,002基)設置していかなければならないのが、現状です。戸別合併処理浄化槽整備事業は、市が国の補助を受け設置し、使用者から料金を徴収し、維持管理を行なっています。平成20年頃までは、基金を積み立てておりましたが、現在では修繕等が増加し、歳入が追いつかず、市費より繰出し金を活用しているのが、現状です。平成28年度の修繕料は、8,555千円の見込みで、うち基金の取り崩し2,000千円、浄化槽使用料235千円、繰出金(一般財源)6,320千円が繰出金充当額です。また、修繕の件数は、毎月50箇所~60箇所発生し、年間では約700箇所前後です。この事業の長所は、①市が浄化槽法に基づいて保守点検、清掃及び法定点検を徹底して実施するため、放流水の安定、向上することができます。②高度処理型浄化槽を採用し、水質の基準値を常に確保できるため、水路や河川の藻の発生や悪臭を軽減して、より一層の汚濁負荷量の削減となります。高度合併処理浄化槽では、BOD10mg/ℓ以下の処理を達成しております。③下水道整備に比べ、大幅な事業費が抑制となります。④施工期間が短縮できるため、供用開始が容易となります。以上、分析した結果、事業開始した当時の「特定地域生活排水処理事業」は、「全県域下水道構想」下水道100億円もの減額もされ、効率性はよく、基金を取り崩しかけた平成20年頃から、繰出金(一般財源)の増となり、20年が経過した今、効率性が悪化傾向となっていく。①収益的収支比率については下落傾向にあり、当地区の高齢化率が42.54%と高水準であり、年金生活者が多く、支払い困難となっているのではないかと推察されます。⑥汚水処理原価であるが類似団体数値と比較すると低水準に収まっている状況にあるが、上昇傾向にあることから今後の推移を注視していく必要があると思われる。その他分析項目は類似団体数値と比較して大きく離れた数値を示しているものはないが、先に述べた高齢化率が高水準にあることと、老朽化しつつある施設の増加が今後見込まれ、経営の健全化、効率性の維持は容易ではないと思われる。
老朽化の状況について
飯南・飯高管内の市が管理している浄化槽は、平成8年度より設置してますが、設置後20年以上経過した戸別合併処理浄化槽は、157基となり、今後老朽していく浄化槽が間違いなく毎年増加していきます。具体的な主な修繕は、老朽化による漏水修理、隔壁補修修理、ブロワ本体(5年に1回)修理、水中ポンプ取替等が増額いたします。使用料の増額も考えたのですが、高齢化率42.5%におよぶこの地域では、使用料の負担をこれ以上求めていくのは、困難です。実際、滞納整理や修繕箇所を確認に訪問しますと、ほとんどの生活が年金暮らしと聞いております。また、料金制度の中で、松阪市市町村整備型浄化槽減免規定に基づく対象者数はH27.10末現在で、314件、減免金額5,874,000円となっており、昨年度と比較いたしますと、26件577,000円増加していますのが、現状であります。また、毎年浄化槽使用の休止、廃止も増えて財源確保が困難になってきている状況です。
全体総括
戸別合併処理浄化槽設置には、宅内等の改装費用に多額の個人負担が必要となるため、高齢化率42.54%となるこの地域で水質浄化の必要性は認識しながらも、戸別合併処理浄化槽設置する世帯が減少しているのが現状であり、計画的に設置いていくのが困難です。また、設置後20年以上経過した戸別合併処理浄化槽が、157基となり、今後老朽していく浄化槽が毎年増加していくことが予想されます。高齢者の多いこの地域では、使用料の負担をこれ以上求めていくのは、困難です。実際、滞納整理や修繕箇所へ訪問に行きますと、ほとんどのご家庭が年金暮らしと聞いています。また、飯南・飯高管内では、浄化槽減免制度を松阪市市町村整備型浄化槽減免規定に基づき設置されてます。減免対象者数はH27.10末現在で、314件、減免金額5,874,000円です。昨年度と比較しますと、26件577,000円増加しています。今後は、どのような制度で維持管理していくのか、また、残りの単独処理浄化槽や汲み取り式の1,388基を戸別合併処理浄化槽に、変更していくため、きめ細かな情報を得ながら事業を進めていかなければならない。