経営の健全性・効率性について
知立市は令和元年度より地方公営企業法を一部適用したため会計処理方法の異なる平成30年度以前とは比較検証ができません。そのため令和元年度のデータのみ掲載しています。本市の①経常収支比率は、目安の100%に届かない状況ですが、令和元年度は流域下水道維持管理負担金の還付金が経常外の特別利益として計上されていることもあり、欠損金は発生していません。よって②累積欠損金比率も0%となっています。③流動比率は、100%を下回ると支払能力に不安があるとされるところ59.97%です。これは流動負債に多額の1年以内償還予定企業債が含まれていることが原因ですが、企業債は翌年度予算で一般会計からの基準外繰入が担保されていますので、支払不能を起こすことはありません。企業債残高の規模を表す④企業債残高対事業規模比率は、全国平均や類似団体平均と比較すると非常に高く、収益に対して多額の企業債残高があります。過去、未普及工事の推進のため多くの企業債を借り入れたことが原因です。普及が進むにつれて分母である営業収益が大きくなるため、将来的には類似団体平均に近づいていきます。使用料で回収すべき経費を、どの程度賄えているかを表した⑤経費回収率は、65.96%に留まり、主たる財源である下水道使用料で、公費負担分を除く汚水処理費が賄えていないことを表しています。また、全国や類似団体と比較して低い数値となっているのは、使用料単価が低いことも要因の一つです。収入の対象となった水量1㎥当たりの汚水処理に要した費用である⑥汚水処理原価は使用料で回収すべき理想の単価150円/㎥を示しています。⑧水洗化率は、類似団体平均を下回っていますが、本市が普及段階であり供用開始から間もない地区が多いことが原因となっています。
老朽化の状況について
本市では、下水道未整備地区の整備推進が急務であったため、ここ数年は修繕・更新を控えていましたが、令和元年度より、平成29年度に策定したストックマネジメント計画に沿って改築更新を進めています。有形固定資産のうち償却対象資産の減価償却がどの程度進んでいるかを表す指標である①有形固定資産減価償却率は、全国平均や類似団体平均と比較して低い数値となっています。これは企業会計移行初年度より減価償却を開始することとし、移行前の仮定の償却額を累計額として計上しなかったためです。②管渠老朽化率は、下水道事業当初に整備された知立団地周辺の管渠が法定耐用年数を超えていることから類似団体平均よりも大きくなっています。老朽管が多いこともあり、③管渠改善率は全国や類似団体と比較して高い数値となっています。今後もストックマネジメント計画に基づき老朽管の改善に努めます。
全体総括
本市の普及率は67.6%(令和元年度末時点)と未だ低く、引き続き未整備地区の整備が必要です。そして汚水整備の推進のほか、老朽化に伴う点検・調査・改築更新、さらには、地震や水害などの災害対策を併せて進めており、財政負担は増加傾向にあります。このような経営環境の変化に適切に対応するため、現状と将来の財政予測を踏まえた中長期における経営の基本となる「経営戦略」を令和2年度策定します。この経営戦略は、汚水整備の効率的推進や水洗化率向上のための補助金制度の創設、使用料改定の検討などを盛り込んでおり、左記の指標を健全に保つものとなっています。令和3年度以降、この経営戦略をもとに、より一層効率的かつ継続的な事業運営を目指します。