経営の健全性・効率性について
知立市は令和元年度より地方公営企業法を一部適用したため会計処理方法の異なる平成30年度以前とは比較検証ができません。そのため令和元年度から令和3年度のデータのみ掲載しています。本市の①経常収支比率は前年度に比べ0.44ポイント増加し、理想値である100%を超えたため健全な経営が出来ているように見えますが、収益の中には一般会計からの繰入金が含まれており単独事業としては未だ成り立っていない状況です。③流動比率は100%を下回ると支払能力に不安があるとされるところ64.55%です。これは流動負債に多額の1年以内償還予定企業債が含まれていることが原因ですが、企業債の支払は翌年度の予算で一般会計からの基準外繰入が担保されているため支払不能を起こすことはありません。④企業債残高対事業規模比率は全国平均や類似団体平均と比較すると非常に高く、収益に対して多額の企業債残高があります。過去、未普及の下水道整備のために多くの企業債を借り入れたことが原因ですが、普及が進むにつれて分母である営業収益が大きくなることや、企業債起債額が償還額より下回るように借り入れを行っているため、将来的には類似団体平均に近づいていきます。⑤経費回収率は65.21%に留まり、主たる財源である下水道使用料で汚水処理費を賄えていないことを表しています。類似団体平均と比べて使用料単価が低いことも原因の1つです。収入の対象となった水量1㎥当たりの汚水処理に要した費用である⑥汚水処理原価は、前年同様下水使用料で回収すべき理想の単価150円/㎥を示しています。⑧水洗化率は類似団体平均を下回っていますが、本市が普及段階であり供用開始から間もない地区が多いことが要因として挙げられます。
老朽化の状況について
本市では、下水道未整備地区の整備促進とともに令和元年度より平成29年度に策定したストックマネジメント計画に沿って老朽管の改築更新を進めています。有形固定資産のうち償却対象資産の減価償却がどの程度進んでいるかを表す指標である①有形固定資産減価償却率は、全国平均や類似団体平均と比較して前年同様低い数値となっています。これは企業会計移行初年度より減価償却を開始することとし、移行前の仮定の償却額を累計額として計上しなかったためです。将来的には減価償却累計額が増加するため全国平均や類似規模団体に近づいていきます。②管渠老朽化率は、下水道事業当初に整備された知立団地周辺の管渠が法定耐用年数を超えていることから類似団体平均よりも大きくなっています。老朽管が多いこともあり、③管渠改善率は全国や類似団体と比較して高い数値となっています。今後もストックマネジメント計画に基づき老朽管の改善に努めます。
全体総括
本市の普及率は69.6%と未だに低く、引き続き未整備地区の整備が必要です。また汚水整備推進のほか、老朽化に伴う点検・調査・改築更新、地震や水害などの災害対策を併せて進めており、これらの多額の投資により財政負担は毎年増加傾向にあります。このような経営環境の変化に適切に対応するため、現状と将来の財政予測を踏まえた中長期における経営の基本となる「経営戦略」を令和2年度に策定しました。この経営戦略の中では、左記の指標を健全に保つために経営戦略計画期間内である令和10年度までに下水道使用料単価150円/㎥への改定を目指すことなどを定めています。そのため、令和5年度より下水道使用料単価を約125円/㎥とする1段階目の下水道使用料改定を行い、さらなる収入の増加に努めます。令和7年度には中間見直しの実施を予定しており、施策の進捗状況の検証を行い、その後の5年間の実施計画に反映させ、より一層効率的かつ継続的な事業運営を目指します。