経営の健全性・効率性について
①収益的収支比率については、使用料収入の伸びに対して費用の伸びが大きいため、近年90%台を推移している。要因としては、移管接続をした大型住宅団地に係る管路施設(マンホール、取付管、公共汚水桝)の修繕、供用開始区域拡大に伴う人件費、維持管理費用及び事業拡大中のため建設改良に係る元利償還金の増加がある。なお、H25が極端に減少しているのは、受益者負担金等について多額の収入があったため、資本的収入でありながらも収益的支出に充てたことにより収益的収入が少なくなったためである。④企業債残高対事業規模比率については、当市は整備推進中であり、毎年度返済額を上回る企業債の借入れを続けており、企業債残高は年々増加の一途を辿っているが、そのほとんどを一般会計からの基準内繰入金で賄っているため、グラフのような結果となっている(企業債残高から一般会計負担額を差し引くため)。⑤経費回収率については、使用料収入の伸びに対して維持管理費の伸びが大きくなってきたため100%を下回るようになった。効率的な維持管理を行うとともに、新規整備区域の接続率を向上させ使用料の適正化も含めた使用料収入の増加を図る必要がある。⑥汚水処理原価については、類似団体平均値を下回ってはいるものの年々増加傾向にある。有収水量の増加に対して汚水処理費の伸びが大きいためである。⑦処理施設の増設によりH23に処理能力が倍となったため施設利用率はまだ低い結果となっている。今後、管路整備工事の推進や接続率の更なる向上を図ると共に、人口減少に伴う汚水処理量の減少予測も踏まえた事業計画の見直し等により、施設の効率的な稼働を目指す必要がある。⑧既存大型住宅地の汚水処理施設から公共下水道への転換が多いという当市の特性のため、水洗化率は平均値を上回っているが、新規整備区域における接続率を更に向上させていく必要がある。
老朽化の状況について
当市の公共下水道は、供用開始が平成18年で比較的新しく、新設管渠については古いものでも十数年程度の経過である。従って、改築、更新が必要となるのは移管接続をした住宅団地の老朽化した管路施設となる。管渠改善率を向上させるためには、この住宅団地の下水道管の更新に取り組む必要があり、「名張市公共下水道長寿命化計画」を策定し、平成22年度~平成25年度の期間の計画策定分については完了し、現在、平成26年度~平成31年度の期間で改築工事を進めている。今後はこれに替わる「名張市公共下水道ストックマネジメント計画」を策定し、管路のみならず汚水処理場やマンホールポンプ施設も含め長寿命化に取組むこととしている。なお、③管渠改善率の長寿命化も含めた数値については、以下のとおりである(H27からは一致)。H24:0.02%、H25:0.50%、H26:1.47%
全体総括
平成10年に事業着手し、平成18年3月から一部供用開始をした当市の公共下水道は、「名張市下水道整備マスタープラン」、「名張市公共下水道全体計画」に基づき計画的に未普及解消、住宅団地の移管接続等の事業に取り組んでいる。平成28年度末の事業の進捗率は平成28年度の事業区域に対し80%であり、平成29年度には区域の拡大を行っており、今後もさらに区域拡大に伴う事業取得を行う予定であるなど、まだ事業拡大の途中である。このような状況のなか、年々、処理水量、維持管理対象施設(管路含む)が増え、それに伴う汚水処理費も増大している状態である。接続率の向上による使用料の増収はもちろんのこと、補助事業の活用、大規模修繕への起債充当など、使用料以外の収入も確保を工夫しながら、一般会計繰入金に依存しない経営となるよう努力していく必要がある。また、法適化することにより正確な経営状況を把握し、適正な使用料の設定など経営の健全化を図って行くことが必要である。