経営の健全性・効率性について
当該事業は、維持管理費用の増大や使用水量の減少など厳しい経営環境にある。個別の指標から検証すると、使用料収入や一般会計からの繰入金等の収益で維持管理費や支払利息等の費用をどの程度賄えているかを表す経常収支比率は102.91%で、単年度収支は黒字になっているが、類似団体と比較すると低くなっている。また、経常収益における使用料収入の割合は約33%で、一般会計からの繰入金等への依存度が高くなっている。短期的債務の支払能力を表す流動比率は、38.28%で100%未満になっている。流動負債には建設改良等に充てられた企業債が含まれているが、類似団体よりも支払能力が低いことを示している。企業債残高対事業規模比率は類似団体を上回っている。経費回収率は、83.87%で類似団体と比較して高くなっているが、100%未満で使用料以外の収入で汚水処理費が賄われているため、今後も適正な使用料収入の確保及び維持管理費の削減が必要である。汚水処理原価は類似団体の平均値より低く、類似団体に比べて効率的に汚水処理が実施されている。施設利用率は流域下水道で処理した水量も計上されているため100%を上回っているが、単独公共下水道事業における、施設利用率は35.48%で類似団体の平均値を下回っている。水洗化率も類似団体を下回っているため、適切な施設利用、使用料収入の増加の観点から水洗化率向上の取組が必要である。
老朽化の状況について
老朽化の状況については、有形固定資産のうち償却対象資産の減価償却がどの程度進んでいるかを表す有形固定資産減価償却率が8.23%で、類似団体の平均値15.82%を下回っており、施設は比較的新しいといえる。また、法定耐用年数を超えた管渠延長の割合を表した管渠老朽管率は0.14%で、類似団体の平均値0.01%を上回っている。これは昭和30年代に整備した雨水渠が約600mあるためで、改築等の必要性を適正に判断し管理していく必要がある。管渠改善率は0%であるが、管渠については平成元年度ころから本格的に整備が開始され、今後は老朽化対策に要する事業費は飛躍的に上昇することが予想される。限られた財源の中で、計画的な更新を行っていくには、長期的計画の策定が必要である。
全体総括
現状においては、一般会計から繰入等を行い、安定的な経営を維持している。今後は、節水型社会の移行による使用水量の減少と施設の老朽化に伴う費用の増大が見込まれる。企業債償還金についてもしばらくは高水準で推移する見込みである。企業債償還金が、減価償却費で賄いきれず資金的にも厳しい状況が続く。効率的な経営をするために、業務や施設の集中化・集約化、長寿命化計画に基づく施設更新、工事の一括発注などを実施するとともに、水洗化率の向上の政策をとることにより収入を増加させ安定的な経営を維持する努力を継続していく。