経営の健全性・効率性について
本市の下水道普及率は、平成27年度末で45.3%と50%に満たない状況であり、普及率の向上に向けての一層の努力と経営の効率化、健全化が当面の課題である。収益的収支比率は、100%に満たず下降ぎみで、単年度収支が赤字であるため、今後の経営改善に向けて取り組みを行っていく必要がある。企業債残高対事業規模比率は、微量の減少傾向にあるが、類似団体の平均と比較するとかなり高い。これは整備を進めるために企業債を発行しているためだと考えられる。経費回収率については、ほぼ横ばいに推移しており、類似団体と比較すると2分の1程度とかなり低い割合である。これは汚水処理原価が類似団体より高く、使用料単価が類似団体より低いことが要因として考えられる。今後、適正な使用料を設定するため改定検討をすすめていく必要がある。汚水処理原価は、類似団体と比較すると高い傾向にあり、効率的な汚水処理が実施されていないことの表れである。効率的な整備と維持管理経費の削減、加入率の向上を図り、有収水量を増加させる必要がある。水洗化率は、年々増加傾向にあるが、類似団体と比較すると低い割合にある。水洗化率は使用料収入に直結することから、継続した普及啓発と効率的な整備を図っていく必要がある。
老朽化の状況について
本市の下水道事業は、供用開始から30年が経過しており、下水道施設や管渠の耐用年数はおおよそ50年であるため、耐用年数を経過した施設や管渠は存在していない。しかし今後の老朽化に向けて、これまで整備してきた多くの施設、管渠の保守、点検、補修などが必要となることを見込んで、財源の確保や経営への影響を考慮していく必要がある。
全体総括
環境意識の向上や少子高齢化による安全で暮らしやすい社会への意向により、下水道に対する期待が寄せられている。限られた財源のなかで、市民の理解を得ながら事業を進めるためには、事業の目標や効果、優先度を具体的に示していく必要がある。本市の普及率は未だ50%に満たないものであり、「経営」というよりもむしろ「整備」を進めていかなければならないのが現状である。今後は、本市が28年度に策定したアクションプランに基づいて整備を進め、公営企業会計方式を導入することで、将来の見込みを踏まえながら、下水道事業の適正運営に向けて経営改善に取り組んでいく。