経営の健全性・効率性について
本市の下水道普及率は、令和元年度末で49.94%と50%に満たない状況であり、普及率の向上に向けての一層の努力と経営の効率化、健全化が当面の課題である。また、令和元年度に公営企業会計に移行され、地方公営企業法適用による初めての決算であるため前年度と比較するデータがない。経常収支比率については、63.17%で類似団体の平均値107.15%を大きく下回っており、単年度収支が赤字である。累積欠損金比率については、166.40%で類似団体の平均値15.68%を大きく上回っており、多くの累積欠損金が生じている。流動比率については、32.05%で類似団体の平均値46.82を下回っており、1年以内に支払うべき債務に対し支払うことができる現金等が不足している。企業債残高対事業規模比率についは、4,346.63%で類似団体の平均値1,028.05%を大きく上回っており、使用料収入に対する企業債残高の割合が高い。経費回収率については、54.48%で類似団体の平均値94.73%を大きく下回っており、汚水処理に係る費用が使用料収入で賄えていない。汚水処理原価については、158.42円で類似団体の平均値160.91円をやや下回っており、汚水処理に係るコストが高い状況である。水洗化率については、88.76%で類似団体の平均値86.28をやや上回っている。この数値は、下水道を整備した区域の人口に対し、実際に下水道に接続した人口の割合である。以上、改善を要する数値項目については、経営の健全化及び効率化を目指し、下水道使用料の料金見直しを検討するとともに水洗化率の向上に向けたイベントや広報活動等、更なる取組みが必要である。
老朽化の状況について
本市の下水道事業は、平成5年の供用開始から28年が経過しており、下水道施設や管渠の耐用年数は概ね50年であるため、耐用年数を経過した施設や管渠は存在していない。有形固定資産減価償却率は、30.32%で類似団体の平均値17.24%を上回っており、資産の老朽化度合いが類似団体より高い。管渠改善率については、2.16%で類似団体の平均値0.12%を上回っており、管渠の老朽化度合いが類似団体より高い。特にマンホールポンプ施設において、老朽化等により修繕の必要性が生じてきている。今後、これまで整備してきた多くの施設について、管渠の保守、点検、補修などが必要となることを見込んで、財源を確保することにより、経営の負担を極力少なくする必要がある。
全体総括
環境意識の向上や少子高齢化による安全で暮らしやすい社会へ向けて、下水道に対する期待が寄せられている。限られた財源のなかで、市民の理解を得ながら事業を進めるためには、事業の目標や効果、優先度を具体的に示していく必要がある。本市の普及率は未だ50%に満たない状況であり、整備を進めていかなければならないのが現状である。今後は、本市が平成28年度に策定したアクションプランに基づいて整備を進めていく。また、公営企業会計方式を導入したことで、経営や資産の状況を正確に把握し、経営基盤の計画的な強化と財政マネジメントの向上(適正な下水道使用料の検討)に取組み、下水道事業の適正運営に向けて経営改善を図る必要がある。