経営の健全性・効率性について
【収益的収支比率】100%未満で推移しており、これは毎年度、単年度収支が赤字基調であることを示している。主な要因として、施設整備に係る地方債償還金が大きく影響しており、現在も施設整備中のため引き続き高額で推移していく状況である。そのうえ、総収益のうち約79%は一般会計繰入金で占められているため、さらなる水洗化率向上を目指し、使用料収入の確保に努める必要がある。【企業債残高規模】平均値と比較しても比率が非常に高くなっているが、当市の公共下水道事業特別会計の企業債残高は事業費の縮減にともない減少傾向にあり、さらに2処理区のうち、現在整備途中である宇和処理区については営業収益も増加が見込めること等から、徐々にではあるものの比率は改善していく見込みである。しかしながら、企業会計への移行にともない、現在の一般会計負担額の基準はさらに厳格化する必要があるため、算定対象となる残高(残高-一般会計負担額)については増加する見込みである。【経費回収率】繰入基準について、今までは市独自の基準で算定していたが、28年度より国の基準に基づき算定することとしたため、経費回収率が大幅に増加したものである。比率が100%に満たない部分については、全額を一般会計からの繰入金で賄っている状況である。さらなる水洗化率向上を目指し、使用料収入の増収に努めると伴に、適正な使用料の分析と改定が今後必要である。【汚水処理原価・施設利用率】繰入基準について、今までは市独自の基準で算定していたが、28年度より国の基準に基づき算定することとしたため、汚水処理原価が大幅に減額となったものである。平均値と比較して低い状況ではあるが、引き続き接続率の向上を推進し有収水量の増加に努めていく必要がある。施設利用率については、平均値と比較して低い率となっている。これは、現在の処理水量に対して、施設能力が過大となっていることを意味していることから、早期の水洗化率向上を目指す必要がある。また、施設の処理能力や耐用年数等も踏まえ、近隣の農業集落排水施設との統廃合についても早期に検討し、適切な施設規模を維持する必要がある。【水洗化率】2処理区のうち1処理区は整備途中であるため、比率は56%程度にとどまっている。処理区毎で見ると野村処理区(H17.3月供用開始)は61.1%、宇和処理区(H19.3月供用開始)は52.4%と、宇和処理区が伸び悩んでいる状況であり、さらなる水洗化率向上の取り組みが必要である。
老朽化の状況について
管渠施設については、野村処理区(平成16年度供用開始)・宇和処理区(平成18年度供用開始)ともに供用から10年程度しか経過していないため、現段階では更新実績(老朽化した管渠)がない。しかしながら、処理場施設、マンホールポンプ施設については、平成21年度から修繕経費が毎年発生しており、今後も更新が引き続き必要となる見込みであることから、施設の長寿命化を見込んだストックマネジメント計画や経営戦略の策定など、施設のマネジメントに取り組んでいく必要がある。
全体総括
「経営の健全性・効率性」を示す指標はほとんどの項目において類似団体のそれよりも悪いものとなっている。当該公共下水道事業は、一般会計繰入金に依存した財政構造となっており、今後の一般会計の財政状況によっては負担基準の見直しも予想されるため、さらなる接続率向上推進による使用料収入の増収をはかるだけでなく、「適正な使用料」の分析・検討するなどの下水道事業会計の経営改善の取り組みが必要となってくる。また、「老朽化の状況」を示す指標についても、現在のところ改築・更新時期が到来していないため算出できていないが、今後はストックマネジメント計画の策定等による施設の長寿命化をはかっていく必要がある。当該公共下水道事業については、平成32年度からの法適化を目指しており、これにより、現在県内他市町と比べても低い使用料単価を「適正な使用料単価」とするための分析・検討や接続推進対策をはじめとする経営健全化に向けた取り組みを進めていく。また、近隣施設との統廃合による適正な施設規模の維持に向けた早期検討を行うとともに、施設の長寿命化をはかっていく。