経営の健全性・効率性について
①収益的収支比率は100%を下回っているが、多少の増減はあるものの常に90%を超える状態を維持しており、⑤経費回収率も100%以上あり、これまで他会計からの繰入金に頼らない健全な経営を維持してきたと言える。④企業債残高対事業規模比率も、建設当初に集中して整備を完了したため新たな起債がほとんど無く、償還を完了した起債もあることから、料金収入に対する企業債残高は類似団体よりも低額となっている。建設当初に可能な範囲の水洗化を一括完了したことから、⑦施設利用率、⑧水洗化率ともに全国平均と比べて非常に高い数値を示している。これまでは⑦⑧を要因として⑥汚水処理原価も比較的低く抑えられていたが、施設の老朽化等もあり類似団体と比較して汚水処理原価が微増しており、今後類似団体を参考とした経営努力が必要と思われる。小浜市の農業集落排水は使用水量でなく使用する人員数に応じて使用料を算定する人員割制を採用しているため、近年の大幅な人口減少の影響を受け、使用料収入は減少傾向にある。しかし1か月20.当たりの家庭料金(人員割3人分相当)は類似団体の倍以上と極めて高く、これ以上の使用料単価の増額は困難であるため、今後施設の更新等による起債が新たに発生すれば、④企業債残高対事業規模比率も上昇することが確実で、回収率100%を維持して健全な経営を続けることは非常に難しい。
老朽化の状況について
最も古い施設は昭和63年から供用開始されており、耐用年数の短い機械類は老朽化による修繕や部品交換が必要で、施設の維持管理に係る経費は年々増加している。建設当初からまだ大規模改修は実施されておらず、老朽化した設備や機械類を必要に応じてその都度部分的に修繕することで、経費を最低限に切り詰めた経営を行ってきた。老朽化した施設の改築・改修を行うための計画である最適整備構想の策定にむけ、平成29年度から3ヶ年をかけて施設の健全度を把握するための機能診断調査を実施している。
全体総括
老朽化する施設を最低限の維持管理費で運営することでかろうじて健全な経営を続けてきたが、人口の減少による使用料収入の減少や、施設の老朽化による維持管理にかかる経費の上昇等により、今後も健全な運営を続けていくことは困難な状況にある。今後は最適整備構想による施設の長寿命化を実現し、市内公共下水道への一部施設の統合や、会計の法適化と経営統合等、市内下水道事業全体規模での根本的な経営の在り方について、検討を進めていかなければならない。