経営の健全性・効率性について
平成22年度に臨空工業団地処理区(80ha)を統合したことで、大口使用者が増え、これにより⑥汚水処理原価は類似団体平均よりも低く推移しています。また、平成30年度に「高資本費対策に要する経費」が繰出基準から外れたこと、令和元年度より合併地区における基準外繰入基準を見直したことにより、①経常収支比率、③流動比率は大きく減少しましたが、公共下水道事業においては良好な値を示しており、両事業を合わせた決算値では、100%を上回っています。処理場の改良費が、減少していることから④企業債残高対事業規模比率は、減少しています。⑤経費回収率、⑦施設利用率、⑧水洗化率は、類似団体平均を上回り概ね順調に推移しています。しかしながら、山間部の処理区では、人口減少が進行していること、また、料金体系が一部の処理区で異なることなどの事業運営上の課題もあり、料金体系の統一化を含めた適正な使用料のあり方、広域化による施設の効率的利用などについて、経営審議会に諮りながら、さらに具体的な検討を進めていく必要があります。なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、下水道使用料収入への影響が懸念されており、特に安曇地区(上高地)の下水道については、観光需要に大きく影響を受けることから、今後の動向に注視していきます。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率は、全国平均や類似団体平均値と比較して高くなっています。今後は、電気、機械設備を中心に、予防保全型の維持管理と、計画的かつ効率的な改築、更新を行います。また、②管渠老朽化率は、法定耐用年数を経過した管渠がなく、公共下水道管渠の改築、更生工事を優先して実施しているため、③管渠改善率は低い状況となっています。
全体総括
節水型機器の普及、超少子高齢型人口減少社会の進展により、今後、有収水量の伸びは期待できず、下水道使用料収入は減少することが予測されます。一方、増加が見込まれる老朽化した施設の更新や耐震化・耐水化への投資、さらにはDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けたシステム改修費用やキャッシュレス決済導入に伴う手数料の増加など、多額の資金が必要になります。今後は、より持続可能な下水道事業を目指し、処理過程で発生する消化ガスによる発電事業や太陽光発電事業によって、環境に配慮した施設の運営に注力します。これらの発電による購入電力料金の削減と売電事業による安定的な収益の確保、また適切な施設規模による投資の効率化、新たなICTの導入による維持管理業務の省力化・最適化など、最先端の技術を取り入れながら、長期的な視点に立った事業経営に取り組みます。