経営の健全性・効率性について
本町の下水道事業は、町内に流域下水道の終末処理場があることから、町内全域が下水道計画区域という特徴があります。このことから投資規模が大きくなる傾向にあり、使用料収入等に対する企業債残高の割合を示す「企業債残高対事業規模比率」は、企業会計移行前から引き続き類似団体の平均値を上回っており、債務残高の規模は公共下水道事業ほどではないものの、高い状況が続いています。短期的な債務に対する支払い能力を示す「流動比率」は、負債に占める企業債償還額の割合が高いこと、企業会計移行初年度であり現金預金が少ないこと等が影響し、他団体と比較して低い水準となっています。「経常収支比率」からは、単年度収支が黒字であることが分かり、他団体との比較からも数字の上では大きな問題はないものと思われます。しかし、一般会計からの繰入金に大きく依存している現状を踏まえると、繰入金を縮小していくことが大きな課題となっています。単位当たりの汚水処理費を示す「汚水処理原価」は、類似団体と比較すると低い数値で推移しており、比較的良好な状況といえます。使用料で回収すべき経費をどの程度使用料収入で賄えているかを示す「経費回収率」は、類似団体の平均値を下回り、70%に満たない状況にあることから、使用料の適正化に取り組む必要があります。整備済み区域内の人がどの程度接続しているかを示す「水洗化率」は、類似団体の平均値、全国の平均値いずれも下回っており、接続の普及・促進に対する取り組みが課題です。水需要の減少、節水意識から世帯当たりの使用量は減少傾向にあり、使用料収入は依然厳しい状況です。経営の健全化、効率化に向け更なる取組が必要です。
老朽化の状況について
本町は町単独の終末処理場、ポンプ場を保有しておらず、自主管理する下水道施設としては道路内に埋設している下水道管渠が主なものとなっています。供用開始から30年以上経過しているものの、耐用年数を経過しているものは少なく、施設の老朽化はそれほど進行していない状況です。
全体総括
「流動比率」や「企業債残高対事業規模比率」など類似団体との比較で劣る指標もあり、経営の改善が必要な状況にあるといえます。また、「経費回収率」が7割に満たず、類似団体平均、全国平均ともに下回っているのは、使用料設定が低いことが要因と考えられます。将来にわたり経営の健全性を確保するためにも、使用料の適正化に取り組む必要があります。令和2年度から公営企業会計に移行していますが、令和2年度に策定した経営戦略に基づき、計画的な事業運営を図ります。また、現在は、施設の修繕に要する費用は少ない状況にあるものの、今後、施設の老朽化が段階的に進むため、ストックマネジメント計画を策定するなど、老朽化対策を計画的に進める必要があります。