経営の健全性・効率性について
特定環境保全公共下水道事業については、下水道使用料収入にて業務に係る経費や施設の整備・維持管理に必要な経費を賄う、独立採算の原則のもと運営しています。①経常収支比率は100%を超えているものの、一般会計補助金の割合は総収益の約4割強と多く、繰入金に依存した状態であるため、使用料収入の底上げが必要です。⑤経費回収率に関しては100%未満であり、かつ低いパーセンテージとなっています。このことは、使用料収入で汚水処理費を賄えていないことを意味しています。そのため、経費の削減を徹底するとともに、次回の経営戦略改定時には、使用料改定を本格的に検討し、経営改善に尽力する必要があります。なお、特定環境保全公共下水道事業区域は、下水道事業開始当初から整備を行っており、現在では整備を完了しております。そのため、企業債残高は非常に少なく、かつ年々減少しています。それにより、④企業債残高対事業規模比率もとても低いパーセンテージとなっています。③流動比率に関しては、本町は水準が高くなっていますが、短期的な債務が少ないだけであるため、実態としては、現金等の金額が大きくプールされているわけではありません。⑦施設利用率が「-」となっている理由は、本町の下水道はすべて「流域関連下水道」であり、流域下水道へ接続し処理をしているため、処理場を所有していないことから「-」となっています。⑧水洗化率については、全国平均や類似団体平均を下回っております。この主な要因としては、本特環区域は整備が完了していますが、下水道への接続が前提となる民間開発がそれほど活発な区域ではなく、転入による人口増もそれほど多くはありません。いわゆる昔ながらの住宅地となっており、浄化槽から下水道への切り替え(下水道接続)への興味や関心・意欲等が高くない区域となっています。そのため、下水道への新規接続件数も芳しくないことから、水洗化率も低調となっています。今後の対策としては、使用料収入の底上げを行うため、下水道の利便性や快適性を住民に理解していただき、下水道への接続を引き続きより一層促進していくことが必要になります。併せて、安定的な使用料収入を得るため、使用料の滞納を最小限に止めるための未納対策を行うことも重要となります。また、企業債の債務残高についても、適切な資金運用のもと、現状の減少傾向を維持していくことが重要です。
老朽化の状況について
本町の特定環境保全公共下水道事業は、昭和57年から下水道管渠の布設を始めており、現時点では管渠の法定耐用年数を経過していません。そのため、①有形固定資産減価償却率のパーセンテージは低く、②管渠老朽化率はまだ「0」となっています。しかし、管渠の老朽化は確実に進行していると考えられます。そのことから、本町では、不明水対策調査及びそれに基づいた管内補修工事を行っております。不明水対策調査ではTVカメラ調査等を行い、異常・損傷等が見つかった箇所について、補修工事等を行っています。今後の対策としては、策定済みの「ストックマネジメント計画(簡易版)」に基づき、管渠の法定耐用年数を考慮しながら、将来的な整備計画を立てるほか、その後、同計画(詳細版)を再度策定し、補助事業として国庫補助金を交付してもらいながら、管渠更生工事等を実施し、管渠の効率的な改築・更新・維持管理に努めていく必要があります。
全体総括
本地区は管渠整備が完了しておりますが、節水意識の高まりや節水家電の普及により、使用料収入が停滞しています。そのため、未だ下水道へ接続していない住民に対し、接続を促進するとともに、未納対策を強化し、使用料収入を増加させることが必要です。また、経費回収率の向上を図るため、令和2年度に策定した「経営戦略」を次回改定する際には、使用料改定について本格的に検討する必要があります。加えて、経費の削減を徹底し、経営改善に全力で取り組む必要があります。また、管渠の整備に合わせ、後年度の管渠の老朽化を早期に発見し対応できるよう、策定した「ストックマネジメント計画(簡易版)」を活用し、管渠の効率的な維持管理等に努めていく必要があります。