経営の健全性・効率性について
本事業は令和2年4月から地方公営企業法を適用することに伴い、令和元年度は令和2年3月31日に出納を閉鎖しており(以下、「打切決算」という。)、令和元年度の各指標は、その影響による増減がある。経営の健全性については、分子である使用料収入がほぼ横ばいとなっているなか、分母である汚水処理費は、減価償却期間より短い期間で企業債の償還を進めていることから、⑤経費回収率が100%を割り込んでいる。平成28年度から上昇傾向だが、引き続き使用料収入の確保や更なる経費削減の必要がある。①収益的収支比率が100%超となっているのは、分子となる総収益より分母となる総費用の決算に含まれていない額が大きかったことに起因している。④企業債残高対事業規模比率は減少傾向にあり、類似団体と比較して6割程度であることから、企業債の償還が進んでおり良好と考える。費用の効率性の観点からの⑥汚水処理原価は、前年度より減少しているが、これは分母となる有収水量が横ばいとなっているなか、打切決算により汚水処理費のうち維持管理費の一部が決算に含まれていないことによる。汚水処理原価の分母となる有収水量について、⑧水洗化率は、接続促進の取組みの成果から増加傾向にあり98%を超えている。そのため、新たな「使用料対象の捕捉」の観点からは対象が限られており、今後の有収水量の大幅な増加は見込めない。
老朽化の状況について
本市は昭和30年に下水処理場を含む北野処理区の工事に着手し、その後、流域関連公共下水道を順次追加し、平成19年度に汚水処理施設の整備を概成した。昭和44年に使用開始した北野下水処理場は、長寿命化工事等により順次設備を更新してきたが、令和2年度に流域下水道に編入したことに伴い廃止した。管渠は初期に布設されたものは30年以上経過していることから、平成21年度から耐震化工事、平成26年度から長寿命化工事を実施し、耐震化工事については平成30年度に完了した。このことにより③管渠改善率は類似団体の平均値を上回っている。今後も下水道ストックマネジメント計画に基づき、リスク予測を行い効率的に点検・調査を実施し、調査結果を基に計画的な改築・修繕を行うことにより、ライフサイクルコストの低減と平準化に取り組む。
全体総括
本市の下水道事業は、各指標が示す通り、現在は厳しい経営状況にある。この大きな要因は、過去に集中して施設整備を行った企業債の元利償還が支出に占める割合が高いことにある。今後は企業債の元利償還額は年々減少していく見込みのため、経営状況は改善する予定である。令和2年4月から地方公営企業法を適用し、より一層の経営基盤の強化と財政マネジメントの向上に取り組むことにより持続可能な事業経営を推進する。