経営の健全性・効率性について
①経常収支は100%を超え、また、②累積欠損金も発生していないことから、両比率とも良好な値を示している。しかし、一般会計からの繰入が総収益の58.4%を占める一方、使用料収入は16.3%にとどまっていることから、将来的に繰入金の減少が見込まれること等を考慮すれば、今後は、維持管理費の抑制はもとより、財源構成についての検討も必要である。③流動負債に対する流動資産の割合である流動比率の急激な落ち込みは、H26の会計基準の見直しに伴い、それまで資本と扱われていたものが負債勘定に計上されることになったために生じたもので目安となる100%の水準を大きく下回っているものの、使用料収入や一般会計からの繰入等により支払い能力は確保されている。④H29は料金改定に伴う営業収益の増加及び企業債の償還により、当比率は減少した。今後、老朽化に伴う施設更新が予測されるため、事業費の平準化が必要である。⑤経費回収率は、料金改定に伴う下水道使用料の収入の上昇により例年に比べて改善した。⑥汚水処理原価は、資本費に係る汚水処理費が前年度に比べ増加したことにより上昇した。今後、労務単価等の上昇による維持管理費の増加といった懸念はあるものの、経営の効率性確保のためコスト縮減や料金改定の見直しを定期的に検討していく必要がある。⑦施設利用率は、類似団体及び全国平均値と比較しても高い水準で推移している。⑧水洗化率は、全国及び類似団体の平均値と比較しても安定して高い水準を維持している。
老朽化の状況について
供用開始が昭和61年度と比較的新しく、現在も建設改良事業を進めている。現時点では、管渠の老朽化の度合いは深刻な状況とはなっていない。しかし、短期間に集中的かつ大規模に整備を行ってきた経緯があることから、将来、更新時期が一斉に到来することが懸念される。
全体総括
経営の健全性・効率性を表す指標は、概ね良好であるが、本事業は、収益に占める使用料の割合が低く、一般会計からの繰入金や公共下水道事業との一体的な運営が前提となっている事業である。施設の老朽化については、現在のところ深刻な状況とまでは言えないものの、今後更新時期が一斉に到来することで財政状況を圧迫することが懸念されるため、地域の将来像と投資需要を適切に把握し、ストックマネジメントを活用した施設の統廃合やダウンサイジングといった効率的な施設管理に取組む必要がある。こうした課題に対し、本市では29年度から10年間を計画期間とする「鳥取市下水道等事業経営戦略」を策定しており、この中に定めた各種目標の達成を通じて、経営の健全化や施設の効率的な管理や機能の維持に取組んでいく。