経営の健全性・効率性について
平成10年に事業に着手し、平成18年10月から一部供用を開始し順次整備を進めていますが、下水道普及率は35.50%(前年度比1.0%増)と未だ整備途上の段階にあります。このため、下水道への接続件数は徐々に増えつつも、まだ有収水量(汚水流入量)が少ないため、流域下水道によるスケールメリットが発揮されておらず、汚水処理に係る費用単価は、類似団体と比較しても割高に推移しています。また、使用料収入も脆弱な中、整備開始当初の大規模事業時の起債の償還が続いており、その財源不足を多額の一般会計繰入金に依存する厳しい経営状況にあります。ただし、使用料収入に対する企業債残高の割合については、平成29年度に類似団体平均より高くなったものの、年々減少傾向にあることから、建設投資規模としては概ね適切であると判断されます。整備段階の現在においては、経費の多くを使用料収入以外の財源で賄っている状況で健全性は低く、汚水処理コストも高く効率性も低いと言わざるを得ません。適正な規模の整備と早期接続による有収水量の増加と使用料収入の確保、滞納対策強化による使用料収納の徹底が、健全経営に向けた喫緊の課題と言えます。
老朽化の状況について
矢部川流域関連公共下水道事業の構成市であるため、処理場等の施設は保有していません。管渠やマンホールポンプについては、事業開始からまだ日も浅く、法定耐用年数(50年)を経過するものはなく、現段階では深刻な老朽化の状況にはありません。今後は、将来的な更新費用の増加に備え、維持管理における適正な点検や整備を行いながら、ストックマネジメントの導入により、維持修繕の計画的、効率的な運用に努めていかなければなりません。
全体総括
今後も引き続き、建設投資と地方費の償還に多額の費用を要することとなるため、世代間負担の平準化に配慮した投資と財源確保の計画的運用が重要となります。整備においては、整備効率の高い地区を検証しながら計画実施していくと同時に、供用開始区域における接続をさらに促進させ、使用料収入及び汚水流入量の増加を図っていく必要があります。これにより、汚水処理原価の低下、経費削減が見込めます。そのため、地元説明会の開催や戸別訪問、各種イベント等により、下水道事業への住民の理解を広めると共に、補助金や融資制度の周知を行う等早期接続に向けた取り組みを展開し、平成31年度からは地方公営企業法を一部(財務規定)適用して経営状況を正確に把握し、平成32年度には経営戦略の見直しを行い、経営の健全化・安定化を目指していきます。