収益等の状況について
本市公営宿泊施設(以下「桂浜荘」という)は,H27年度より収益的収支比率が100%を超えているが,他会計補助金比率が急上昇している。これは,H26年度までに改築に係る起債償還を終えたものの,当該改築等による資金不足を解消するため,一般会計からの繰入を実施しているためである。(H31年度まで一般会計からの繰入を継続することで,資金不足比率は経営健全化基準の20%を下回る見込)また,収支改善に向け以下三点に取り組む必要がある。第一に,収入増加を図るため定員稼働率(全国平均及び類似施設の平均を上回るものの,50%未満でほぼ横ばい)を上昇させる利用者増加に向けた取組が必要である。第二に,顧客満足度を損なわない程度の適正な客単価設定の宿泊プランの開発やプラン見直しにより,稼働率と客単価のバランスをとることが必要である。第三に,支出減少を図るには,類似団体と比較して売上高GOP比率が低く売上高人件費比率が高いため,人件費を抑制し,効率的なサービス提供を行う必要がある。
資産等の状況について
建物部分については,H7年度に実施した改築に係る起債償還はH26年度に完了しているものの,改築後20年以上が経過している。営業収益増加のため,顧客ニーズの高い客室の洋室化やレストラン部分の改築等についても検討する必要があるが,これらの改修については多額の費用が必要であることから,収益面での効果等を検証のうえ,慎重に検討する必要がある。建物内部の設備機器については劣化が進んでおり,緊急度及び重要度の高い箇所を中心に,収益等を勘案しながら順次改修を検討する必要がある。
利用の状況について
市全体の宿泊需要は概ね横ばいから上昇傾向にあり,桂浜荘の宿泊需要も同様に概ね横ばいから上昇傾向にある。桂浜荘は,周辺には桂浜,坂本龍馬像など,本市を代表する観光資源があり,坂本龍馬記念館も隣接している宿泊施設であるため,毎年度,一定の宿泊需要が見込まれる。また,隣接施設の高知県立坂本龍馬記念館が,H29年4月1日から新館建設工事のため休館していたものの,H30年4月21日にリニューアルオープン予定であり,当施設は志国幕末維新博の第二幕のメイン会場となっていることからも,堅調な宿泊需要が見込まれる。なお,桂浜荘は,都市公園法の制約を受ける立地にあるため,施設を自由に増改築できない等の制約が大きく,民間譲渡の可能性は低い。そのため,本市が経営を継続する中で経営改善を図る,もしくは事業廃止を行うかについて,慎重に検討する必要がある。
全体総括
桂浜荘は本市を代表する景勝地である桂浜公園内にあり,一定の宿泊需要が見込まれる。一方,平成7年に実施した施設改築の起債償還等が要因で資金不足となり,一般会計からの繰入で資金不足比率を経営健全化基準未満にする途上である。資金不足に陥った要因を強く受け止め,今後は独立採算可能な経営を行うことが必須である。今後の設備投資に必要な経費を独立採算で確保するため,人件費の抑制による支出減少や,顧客満足度を損なわない程度の適正な客単価設定の宿泊プランの開発や見直し等による収入増加を図り,収支改善に取り組む必要がある。なお,現在の経営健全化計画は,H21~H31年度を対象期間としており,当該計画の達成状況を鑑みながら,経営改善に向けた施策,事業の継続可否について慎重に検討を行っていく。