経営の健全性・効率性について
単年度の収支【①】は赤字(H25は下水道使用料の調定時期変更により13か月分計上したため黒字)が続いていることが、累積欠損金【②】が継続して発生し、流動比率【③】・経費回収率【⑤】・汚水処理原価【⑥】が平均値に満たない要因となっております。経年比較で見ると年々数値が改善している傾向(③はH26制度改正により数値が急激に低下)にありますが、更に改善するためには単年度収支の黒字が不可欠であり、今まで以上に収入の確保と経費の縮減の取り組みを推進する必要があります。企業債残高【④】は毎年20億円程度減少しておりますが、それでもH26末時点で約934億円となっており、引き続き、単年度当たりの建設改良費を原則、40億円以内に抑えるとともに、効率的な整備により借入を抑え、企業債残高を減少していく必要があります。施設利用率【⑦】は、H24以降平均値を上回っておりますが、H26の最大処理水量で見ると73.42%であり、25%以上が剰余となっていることから、今後、増設や更新を検討する際には、未普及地域の整備を推進している段階ではありますが、需要を見極めた上で、慎重に判断していく必要があります。水洗化率【⑧】は、ほぼ横ばいの状況が続いておりますが、接続世帯の増加が下水道使用料の増収に直結することから、未接続世帯に対して粘り強い接続促進を図る必要があります。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率【①】は年々増加(H26は制度改正のため大幅増)しており、今後も老朽化による改築更新の増加が見込まれます。その規模は偏在化しておりますが、予防保全及び経営安定の観点から、施設の改築更新または延命化を平準化して行う必要があります。管渠老朽率【②】は、H28以降、法定耐用年数を超える管渠が発生することから、順次、管渠の改築更新または延命化を行う必要があります。管渠改善率【③】は、未普及地域の整備を推進している段階であるため、限られた予算の中で新設に重点が置かれてきましたが、今後改善する必要がある管渠の増加が見込まれます。そのため、これまで以上に新設と改善の比重を見極め、効果的な投資を行う必要があります。
全体総括
H22に地方公営企業法を適用し、これまでの普及率向上を主とする投資重視から経営基盤の強化を主とする経営の健全化に方針を転換しました。未普及地域の整備に当たっては人口密度や接続希望などを総合的に判断し、効率的な整備を行った結果、H20には1067億円あった企業債残高がH26には934億円まで減少しました。しかしながら、H26の数値を見ると、平均値を上回っている項目(1-⑦、2-①②)が少なく、改善を進めていかなければならない中で、今後は、節水意識の向上や節水機器の普及に伴い下水道使用水量が減少する一方で、労務費の上昇や処理区域の拡大に伴い維持管理費が増加する厳しい状況が続きます。そのため、今後も水洗化率の向上により下水道使用料収入を確保するとともに、民間活力や新技術などの導入による維持管理経費の削減の取り組みをさらに推進していく必要があります。