経営の健全性・効率性について
本市の公共下水道事業は、収益的収支比率が60%台と厳しい経営状況となっている。経営改善のため維持管理費の抑制を続けており、支出の大幅な削減が難しいなか、収益的収支比率が若干とはいえ改善した要因として企業債償還経費の減少が挙げられる。今後も、企業債償還経費は減少する見込みだが、施設の老朽化により、これまで以上に更新や修繕の経費が発生する可能性もあり予断を許さない状況となっている。一方で収入面では、市街地域への整備が完了し、現在はエリア拡大を休止しているため、宅地造成や未接続世帯の下水への切替等、小規模の増加しか見込めないことに加え、人口減少時代を迎えたことで現状より減少する可能性も否定できない。本来であれば、分流式下水道に要する経費として不足分の資金が一般会計から繰り出されるところだが、本市は一般会計も財務状況が厳しいことで、満額の繰入金がなされないことも、経営状況の悪化を招く要因となっている。①表が示す通り、このことは数年にわたり単年度赤字が計上される状況を招いており、平成28年度に対する繰上充用金が2億2千万円を超え、使用料収入の約4割となるなど、危機的状況となっている。ただし、今後の見通しとしては、本市と隣町の浄化槽汚泥とし尿を平成32年度から受け入れることで、収益が増加し経営改善を見込んでいる。また、平成31年度に公営企業法の適用を行い、経営の見える化を図ることで、将来負担まで見据えた適正な料金設定を図る等、さらなる経営改善に取り組む予定である。
老朽化の状況について
供用開始当時に整備された施設については、建設から30年近く経過し、老朽化が進行しているものもある。そのため、施設の機能維持や更新費用の平準化のために長寿命化計画を策定し、それに沿って更新等を行っている状況である。これまでは、最終処分場の更新工事等を主として行ってきたが、平成28年度からは管渠についても長寿命化計画に基づき更新事業を実施しているところである。
全体総括
使用料収入に対し、企業債償還経費が大幅に上回るなど、経営経費の削減のみでは改善できない状況となっている。しかし、市街地での整備が終了し今後の使用料の大幅な増加が見込めない状況のなか、老朽化による更新経費の増大や人口減少による収入減など、今後の経営を考える上で困難な状況が予想される。今後は、下水道事業のみで経営を考えるだけではなく、浄化槽汚泥等の受け入れや、下水道の運転をする際に発生する副産物エネルギーの有効活用等、新しい視点での運営も行う必要がある。また、ライフラインとして維持して行くために、使用者に対し、応分の負担を求めていくことも必要であり、そのことの住民に対する理解を深めるための「事業の見える化」の取り組みが必要となる。