経営の健全性・効率性について
今決算においては、公営企業法適用化による打ち切り決算のため、例年同様の比較分析はできないものの、①収益的収支比率、⑤経費回収率ともに収支判断基準である100%を下回っており、下水道料金収入だけでは経費を回収できていない状態となっている。①については、打ち切り決算による未収金が発生しているためで、実質数値は昨年とほぼ同様の数値となる。⑤についても、決算数値に未収額未払額を反映した場合、例年同様の数値になると考える。④企業債残高対事業規模比率についても類似団体平均を上回っており、事業規模に対して企業債残高が多いことを示しているが、企業債借入の抑制により企業債残高はひき続き減少している。昨年度より数値が増加した要因は打ち切り決算によるものである。⑥汚水処理原価についても類似団体に比べ高い傾向にあり、汚水処理費に係るコストが高い状態となっているが、類似団体との差は縮まっている。⑧水洗化率については低下しており、類似団体に比べて低く下水道に未接続世帯があるため、費用対効果の低い状態である。これらの要因について、類似団体と単純比較は困難であるが、山間を抱える地域は地形地盤等の関係により建設費が高くなる傾向にあり、建設投資に生じた企業債の元利償還が多額である事が大きな要因として考えられる。また、人口減少及び高齢化により下水道への接続数が増えないことも要因として挙げられる。
老朽化の状況について
桜井市の公共下水道事業は昭和49年に建設を開始しており、もっとも古い管渠は44年を経過しているが、下水道管渠の耐用年数は50年であるため現在は耐用年数内である。しかし6年後には耐用年数を超える管渠も発生するため、順次更新が必要となる見込みである。このため長寿命化対策として管渠のマンホール蓋改築工事を実施しており、平成30年度で26箇所の交換を実施した。令和元年度において、ストックマネジメント計画(下水道施設の更新・修繕計画)を策定し、令和3年度より管渠等の点検、更新を行って行く予定である。
全体総括
当市の下水道は人口普及率67.25%となっており今後も未普及地域への投資が必要であるが、事業の推進には企業債(借金)が生じるため、人口の減少、高齢化等の要因を勘案し、費用対効果の高い地域への建設投資を行うよう計画を策定中である。水洗化率の向上については普及啓発を行い収入の増加につなげるとともに、健全な事業運営、管渠老朽化に伴う更新需要や長寿命化を見越した料金設定が必要であるため、令和元年10月から料金の改定を実施した。