経営の健全性・効率性について
平成24年度の料金改定に伴う収入の増加により、経常収支比率が100%を超えて、一定規模の黒字を確保できるようになった。これに伴い、累積欠損金比率も年々減少し、平成27年度に累積欠損金を解消することができた。経常収支は改善できたが、料金改定前に発生した資金不足を解消するまでには至っておらず、短期的な支払能力を示す流動比率は100%を大幅に下回った状態が続いている。厳しい資金状況のため、投資事業を最小限に抑えており、その財源として借り入れた企業債(借金)の残高は年々減少している。そのため、企業債残高対事業規模比率は減少を続けているが、過去の借入れの残高がまだ多く残っており、類似団体と比べて高い状況にある。汚水処理原価は、1㎥の汚水を処理するために必要な費用であるが、類似団体と比べて高い水準となっている。これは、汚水処理原価の約25%を占める企業債利息の支払いが負担となっているためである。施設利用率が25年度から100%を大幅に超えているのは、算定の対象となる処理水量を市単独処理場のみから流域下水道も含めるように改めたためである。水洗化率は、毎年度わずかずつ増加しているが、平成28年度に集合住宅の接続促進を重点的に進めたことにより、大幅に増加している。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は、下水道施設の減価償却がどの程度進んでいるかを表す指標である。まだ低い水準にあるものの、施設の更新をあまり進めていないことから徐々に増加する傾向にある。平成26年度に大幅に上昇しているのは、地方公営企業の会計制度改正の影響によるものである。管路老朽化率については、管路施設を集中的に整備したのが平成の時代に入ってからであり、耐用年数の50年を超えている管渠はほとんどないことから、低い水準となっている。そのため、管渠改善率も低くなっている。
全体総括
経常収支では黒字を確保できているが、発生した黒字のほとんどを企業債の償還に使っているため、資金不足の解消はあまり進んでいない。平成28年度末時点でなお約600億円の企業債残高があり、今後も厳しい資金状況が続く見込みである。管渠は比較的新しくまだ更新の必要はあまりないが、過去集中的に整備したものが今後20年から30年のうちに、その更新時期を迎える見込みである。また、処理場、ポンプ場の施設・設備の老朽化も進んでいる。資金不足の解消が優先課題ではあるが、資金の状況を見つつ、改築更新についても計画的に順次取り組むことにより、事業費の平準化を図りつつ、修繕等の維持管理も含めて、ライフサイクルコストの低減を図る必要がある。