経営の健全性・効率性について
①の収益的収支比率から単年度の収支を見ると、収益では費用を賄えていない状況が確認できます。④の企業債残高対事業規模比率を見ても平均値より大幅に高く、企業債に依存して設備投資が行われてきたことが分かります。農業集落排水は、平成10年度から整備事業を開始しており、全ての借入れにおいて、未だ償還が終わっていないという現状があるからです。⑥の汚水処理原価も増加傾向にありますが、平成27年度に末広地区を一部供用開始したことにより処理区が3箇所となり、それによる維持管理費が増えています。⑧の水洗化率を見ても、平成26年度までは逓増しているものの、平成27年度に大きく下がっています。これは平成27年度に末広地区を一部供用開始したものの加入接続が始まったばかりのためと見込まれます。また、⑦の施設利用率についても同様に、平成26年度までの高利用率から減少しています。水洗化率は平均値と比べても決して低くはありませんが、⑤の経費回収率が大幅に低いのは、料金体系が使用量ではなく受益者数によるものであり、維持管理費を賄いきれていないことによります。以上のような状況から、水洗化率の向上に努めるのはもとより、適正な料金水準の確保も求められるものと考えています。
老朽化の状況について
本市の農業集落排水事業は平成10年度から取り組み、平成13年度から供用開始したため、比較的新しい施設であると言えます。そのため、現在のところ更新費用等は発生しておらず、老朽化はありません。しかし、設備や機器類の耐用年数は管渠等に比べ短いことから、将来的に更新時期が単年度に集中しないよう、優先度を適切に把握し計画的な対応が必要になると考えています。
全体総括
本市の農業集落排水事業は、生活排水処理整備構想の見直しにより平成27年度をもって整備事業が終了しています。今後は、施設の維持管理へと事業がシフトしますが、これまで借り入れた企業債の償還や耐用年数を迎える設備・機器類の更新に対応するためには、維持管理費の抑制や水洗化率の向上に努めるとともに、将来に亘って事業を継続できる料金体系の整備を進める必要があります。