北海道:工業用水道事業

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経営比較分析表(2021年度)

経営の健全性・効率性について

現在運営している室蘭・苫小牧・石狩の3工水のうち、苫小牧工水では苫東工水の建設事業を中止、石狩工水では施設規模を縮小するなど、過大となった資産を平成18年度末に整理したことにより、多額の未処理欠損金が生じました。その後2回の経営健全化計画(平成18~26年度、平成27~令和元年度)の実施により、平成23年度には単年度黒字に転換しましたが、石狩工水単体では規模縮小後も契約率が低く料金収入のみでは収支均衡しない状況です。①経常収支比率:単年度黒字の継続により100%以上を維持していますが、石狩工水の契約率が32%で給水収益が低いため、類似団体平均値より低くなっています。②累積欠損金比率:令和元年度末に70億円の減資により生じた資本剰余金を累積欠損金に補てんして大幅に解消し、令和3年度は黒字決算だったため純利益を補てんに充て、前年度より4億円解消して約1億円となり、類似団体平均値を初めて下回りました。③流動比率:流動負債の6割を占める企業債が減少したため、前年度より比率が改善されたが、類似団体平均値より低い状況が続いています。④企業債残高対給水収益比率:施設規模等の適正化や経営効率化の取組による経費削減などにより企業債借入を減らし企業債残高の減少に努めているが、石狩工水の契約率が32%で給水収益が低いため、類似団体平均値より高い状況が続いている。以下指標については、令和2年度に室蘭工水・苫小牧工水で契約水量の減(合計約▲15,000㎥/日)があったことにより、令和元年度までと比較して大きく変動しています。⑤料金回収率:室蘭・苫小牧工水は前年度よりそれぞれ20%程度低下したものの100%以上を維持しており堅調ですが、石狩工水は供給単価55円と高水準の一方で、減価償却費などの固定費が高く、契約率も32%と低いことから料金回収率が約24%となっており、類似団体平均値より低い状況となっています。⑥給水原価:委託料の減により経常費用が減少したこと、石狩工水の契約率が27%から32%に5ポイント高くなり有収水量が増加したことから給水原価は19.16円と前年より0.19円低下したが、類似団体平均値より高くなっています。⑦施設利用率:契約率70%の苫小牧工水も実給水量が低いため施設利用率が40%で、契約率32%の石狩工水は更に13%と低く、類似団体平均値より低い状況となっており、契約水量を増やす需要開拓と施設のダウンサイジングやスペックダウンの検討を合わせて行う必要があります。⑧契約率:令和2年度の減量により室蘭工水で▲9%、苫小牧工水で▲2%と契約率が大幅に低下したため、類似団体平均値より4ポイント低い水準となっています。令和3年度契約率32%と低迷している石狩工水については、今後は再生可能エネルギー関連企業などの新規契約や増量を予定しており、大幅に上昇する見込みで改善が見込まれています。

老朽化の状況について

①有形固定資産減価償却率:高度経済成長期に整備され50年前後が経過した室蘭と苫小牧工水は、長寿命化を図りながら計画的に管路や設備の更新を行っています。一方、石狩工水は開業から約20年であるため機械装置を中心に更新を行っています。その結果、現在の減価償却率は3工水とも50%台であり、類似団体平均値より低くなっています。②管路経年化率:室蘭工水は令和元年度までに一部区間の更新を完了し計画的に更新作業を進めているが、更新作業ペースよりも更新区域外の経年化の進行ペースが上回ったため、前年度より3ポイント上昇しましたが、類似団体平均値より低い状況となっており、今後も低い状況が続く見込みです。③管路更新率:上記のとおり順次、経営状況を勘案しながら計画的に管路更新を進めており、類似団体平均値を上回るペースとなっています。

全体総括

経営の健全性・効率性については、平成23年度から令和3年度まで11期連続の黒字や減資による累積欠損金の補てんで累積欠損金比率が大幅に改善した一方、令和2年度からの契約水量の減少により料金回収率等の指標における類似団体平均値と大きく乖離が生じています。特に石狩工水においては契約率が依然として低く、経営健全化計画の実施後も給水原価と料金水準のバランスがとれない状況が開業以来続いており、このことが全体の経営状況に大きな影響を与えています。今後は再生可能エネルギー関連企業などへの新規給水や増量が見込まれ契約水量の大幅な上昇が予定されているものの、更なる給水契約の獲得やあらゆる経費の節減による経営基盤の強化、既存の施設・整備の更新にあわせて、今後の工水需要を踏まえた施設規模等の合理的な投資の検討が不可欠となっています。一方、老朽化の状況については、3つの指標全てで類似団体平均値より良好な状況となっています。管路については、室蘭・苫小牧工水では経年化が進んでいるため経営状況を勘案しながら計画的に更新を進めている一方、石狩工水は開業から約20年であり、ほとんど経年化していません。その他の設備については、可能な限り長寿命化を図りながら適切な改修を行い、投資の効率化や平準化に取り組むとともに健全性を維持しています。

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