経営の健全性・効率性について
まず、財務の健全性・効率性については、本市の水道事業は、「節水型都市づくり」を推進することで料金収入が減少するというジレンマを克服するため、一層のコスト削減を図りながら、より高い水道サービスの提供を目指し、H15年度以降、「組織の再編」と「アウトソーシング」を柱とする経営改革に取り組むとともに公的資金補償金免除繰上償還の制度を活用した高金利企業債の返済を行うなど経営基盤の強化に努めてきた結果、①から⑥の指標は類似団体平均や全国平均よりも良好で、財務の健全性・効率性を確保できている。直近5年間の傾向を見ても、取り組みの効果が、「①経常収支比率」、「④企業債残高対給水収益比率」、「⑤料金回収率」、「⑥給水原価」の指標の向上に表れており、コストを抑制しながら効率よく経営できていることがわかる。一方、施設の効率性についても類似団体平均や全国平均よりも良好な水準を維持している。特に、50万都市としては厳しい水資源環境下に置かれている本市では、「水は限られた資源である」との考えから、給水圧コントロールや漏水調査等の漏水防止対策に積極的に取り組んできた結果、「⑧有収率」については非常に高い水準を維持している。ただし、節水意識の定着や天候不順などにより給水量は減少しているため、「⑦施設利用率」は低下傾向を示している。この指標は、投資の適否を判断する上で大事な指標であるため、長期的な視点で見ていく必要がある。
老朽化の状況について
本市水道事業の供用開始は、S28年で類似団体と比較しても遅く、S40~50年代に整備した施設が多いため、これから更新時期を迎える施設が多く存在する。このため、「①有形固定資産減価償却率」は類似団体並みではあるが、右肩上がりで老朽化が進んでいることがわかる。「②管路経年化率」も右肩上がりではあるが、漏水防止対策として事故多発管等の更新を積極的に実施してきたため、比較的低い水準となっている。「③管路更新率」は、久谷地区簡易水道統合整備事業に併せて水道管を更新したため、H24・25は高くなっている。今後は、大規模地震等の際に広域断水や2次災害を引き起こす恐れのある大口径の基幹管路の耐震化を重点的に行うこととしており、一定の更新率を維持できるよう計画的に整備を進めていく必要がある。
全体総括
本市では、「水道ビジョン松山2009」に沿って主要施設や基幹管路の耐震化を進めているが、安全性と経済性の両面から実施時期や事業費等を検討した結果、浄水場や配水池などの主要施設を優先して耐震化してきた。今後は主要施設の耐震化に加え、大口径の基幹管路の耐震化に重点的に取組んでいくため、企業債発行額の増加、減価償却費等の負担増により、経営状況は次第に厳しくなることが懸念される。そこで、現在、策定中の中長期の経営戦略では、将来の人口減少による水道料金収入の減収や今後更新時期を迎える浄水場の施設規模の検証等をしながら、本市水道事業が将来にわたって「安らぎと潤い、豊かな暮らしを支える水道」を維持できるよう取り組んでいく。