経営の健全性・効率性について
「①経常収支比率」は、過去に国県補助金を財源に整備した管路や施設の耐用年数が超過したことにより、長期前受金戻入が減少していることなどから、経常収益が減少し、比率は低下した。類似団体平均と比較し、市域が広く施設数が多いことから、維持管理費や減価償却費が多くなるため比率が低くなっている。改善に向け、経営の効率化に努める。「②累積欠損金比率」は、欠損金は発生していない。「③流動比率」は、前年度と比較し、繰越事業の増加により前受金の精算ができなかったことから、流動負債が増加し比率は低下した。前年同様、類似団体平均値よりは高く短期的な債務に対する支払能力は確保している。「④企業債残高対給水収益比率」は、企業債の償還額に比べて新たな借入額を抑制していることから、比率は低下傾向となっている。令和2年度は、新型コロナウイルス感染症にかかる緊急対策として、水道料金の減免を行ったことにより比率は上昇したが、令和3年度は従前の傾向と同様に比率は低下した。「⑤料金回収率」は、平成29年度の簡易水道事業の統合によって、給水収益よりも維持管理費や減価償却費等の増加の割合が大きく100%を下回っている。令和2年度は、水道料金の減免の影響により数値は大きく低下したが、令和3年度は減免を実施していない令和元年度と比較しわずかに低下した。地形的要因から経営効率が悪いため、今後も改善に努める。「⑥給水原価」は、平成29年度以降は「⑤料金回収率」と同様の要因により数値は高くなっている。令和3年度は、年間総有収水量が減少したことが影響し、数値は上昇した。本市の給水区域は広大で起伏に富むため、管路や施設の維持管理費用等が多大となることから、給水原価は類似団体平均値より高い傾向にある。「⑦施設利用率」は、年間総配水量が減少したことにより、前年度と比較し数値は低下している。類似団体平均値よりは高く、適正規模の配水能力を有している。「⑧有収率」は、山間部となる旧簡易水道事業地区の凍結防止等のため、管末放水が多く、有収率が低い傾向にある。経年化した管路の布設替えなどの漏水対策を継続的に取り組み、有収率の向上につとめる。令和3年度は、前年度と比較し、数値はわずかに上昇した。
老朽化の状況について
「①有形固定資産減価償却率」は、工事の完了による新規の償却資産の増加に比べ、耐用年数に応じて行われる減価償却の増加の方が割合的に高くなったため、数値は上昇した。類似団体と比較し、老朽化率は低くなっている。「②管路経年化率」は、簡易水道事業統合による法定耐用年数を経過した管路の増加や、整備が比較的多かった時代の管路が法定耐用年数に達してきているため数値が上昇した。①②ともに類似団体平均値よりは低く比較的新しい管路が多いと判断できる。「③管路更新率」は、計画的な管路整備を継続しているが、数値はわずかに低下している。類似団体平均値より高く、老朽化の度合が類似団体平均よりも低いことを考えれば、類似団体と同等以上の更新ペースと考えられる。しかし、本市は施設等が多く、今後の更新費用の増加が見込まれる。水道ストックマネジメント計画に基づき、効率的な水運用を図り、事業費の削減等を行っていく。
全体総括
令和3年度決算では、流動比率や老朽化の状況を類似団体平均値と比較すると、財政や施設の一定の健全性は確保されているといえる。しかし、今後、人口減少に伴い給水収益の減少が見込まれる一方で、老朽化した管路や施設の更新及び耐震化などへの投資の必要性が高まっている。このため、適正な水道料金等のあり方について、令和4年度豊田市上下水道事業審議会において審議され、答申を受けた。この答申を踏まえ、令和4年12月市議会定例会に「豊田市水道事業給水条例」の一部を改正する議案を提出し、令和6年4月使用分から水道料金の増額が決定した。今後も、将来を見据えた事業の見直しや経費削減を継続し、持続可能な水道事業経営へと繋げていく。