収益等の状況について
①収益的収支比率については、過去5年間について、いずれの年も100%未満であり、慢性的な赤字である。そして⑦EBITDAの数値においても類似団体との平均値を下回り、マイナス値であるため、黒字化のための経営改善が必要な状況である。しかしながら、施設の老朽化度合い等から、直接的な宿泊料金の値上げ等は難しいため、従来の会食ニーズの取り込み、夏季のバーベキュープランやうどん打ち体験等の付加価値提供によって宿泊者の客単価の向上に努めているところである。
資産等の状況について
当該施設は平成8年の大規模リニューアル後、20年以上経過し、施設の老朽化及び旅行客のニーズの変化に対応していく必要がある。後者については、全客室へのWi-Fi整備、稼働率の低い和室の洋室化改修工事を実施した。施設の老朽化対策については、一般会計からの繰入金によって老朽個所を都度改修し、施設設備の更新需要に対応していく予定である。
利用の状況について
⑬施設と周辺地域の宿泊客数動向については、平成29年度は、周辺地域における宿泊需要は低下し、当該施設においては宿泊需要が高まっている状況であったが、平成30年度以降は、周辺地域における宿泊需要が低下した一方、当該施設においては宿泊需要が増加している。当該施設は瀬戸内海国立公園内に位置する国民宿舎として国の認可のもと営業しているため、民間譲渡できない施設である。現在は指定管理者制度のもと、民間企業のノウハウを取り入れており、インターネット予約チャンネルの整備や団体向け和室の洋室化工事等によって、団体旅行から個人旅行への旅行ニーズの変化に対応しているところである。
全体総括
当該施設は、国立公園内の認可事業であるだけでなく、宿泊施設の少ない当市にとって、宿泊客の受け皿となっており、施設の必要性は高い。経営については、現在指定管理者制度(利用料金制)を採用し、運営企業のノウハウによって個人旅行客の取り込みに取り組んでいる。当市は、一定額以上の施設修繕や施設改修等を一般会計からの繰入金で行う前提で指定管理者制度を施行しているため、当企業会計の黒字化は当面不可能であるが、今後策定を予定している経営戦略によって老朽化した施設の更新需要に計画的に対応しつつ、当該施設が位置する県立公園および周辺地域全体の観光ニーズの掘り起こしや周辺環境整備によって、運営企業を支援し、将来的には施設更新経費を賄う制度づくりに取り組みたい。