経営の健全性・効率性について
「①経常収支比率,②累積欠損金比率,⑤料金回収率」経営の健全性を示す「①経常収支比率」は,支払利息の減少などによる費用の減はあったものの,年間総有収水量の減少に伴う給水収益の減少が大きかったことにより前年度比1.22ポイント減の123.94%となりました。また,料金水準の妥当性を示す「⑤料金回収率」も,前年度比1.33ポイント減の119.07%となりました。①,⑤ともに100%を上回っていること,また複数年度にわたって累積した損失を示す「②累積欠損金比率」は0%であることから,単年度の事業経営に必要な経費を経常的な収益で賄えています。「③流動比率」類似団体平均等と比べてかなり低い水準となっており,十分な資金残高(内部留保資金)を確保できていない状況を示しています。これは,過去に借り入れた企業債償還の負担が大きいこと,また管路や施設の更新費用が増加している中においても,企業債の発行を抑制しつつ自己資金による更新投資を行っていることによるものです。「④企業債残高対給水収益比率」近年は減少しているものの,類似団体平均等と比べて非常に高い水準です。このため,企業債を財源とする今後の更新投資を抑制・平準化するとともに,新たな企業債の発行額を当年度の元金償還額の範囲内とするなど,企業債残高の削減に努めています。「⑥給水原価」動力費・修繕費の増はあったものの,継続した経営コスト縮減の取組により総費用は減少しましたが,年間総有収水量が減少した影響により,前年度より増加しました。「⑦施設利用率」前年度は熊野浄水場を廃止した影響により一時的に増加に転じていましたが,当年度は年間総有収水量の減少や有収率の向上に伴い減少しています。今後も,人口減少などの要因から,減少傾向が続くものと見込んでいます。「⑧有収率」計画的な配水管の布設替えや漏水対策の取組により,類似団体平均等と比べて高い水準にあり,前年度に引き続き向上しています。
老朽化の状況について
「①有形固定資産減価償却率,②管路経年化率」資産の減価償却の状況を示す「①有形固定資産減価償却率」は,前年度比0.28ポイント増の48.28%,法定耐用年数を経過した管路延長の割合を示す「②管路経年化率」は,前年度比0.39ポイント増の31.18%と施設の老朽化が進んでいることを示しています。これは,昭和40年代から50年代にかけて集中して整備した水道管路が更新時期を迎えているためであり,限られた財源を活用した計画的・効率的な更新や投資額の平準化を行う必要があります。そこで本市では,2015年度(平成27年度)からアセットマネジメント(資産管理)手法を活用し,過去の使用実績などから実質的な使用可能期間である使用年数基準を設定して,施設をできる限り長期間使用するなど,ライフサイクルコストの低減に取り組んでいます。「③管路更新率」当該年度に更新した管路延長の割合を示す「③管路更新率」は,前年度比0.02ポイント増の1.10%となっています。管路の更新に当たっては,多額の事業費を必要とする大口径の基幹管路の更新・耐震化を優先的に実施しており,その結果,基幹管路の耐震化率については,全国的に見ても非常に高い水準にあります。※数値訂正:(R2)1.16%⇒1.08%
全体総括
水道事業を取り巻く経営環境は,不安定な景気動向や節水機器の普及,今後の人口減少などの要因から,収入の根幹である水道料金収入が減少する一方で,管路の布設替えをはじめ,老朽化した浄水場など施設の更新・耐震化などに多額の事業費を要することから,大変厳しい状況が続くものと見込んでいます。また,新型コロナウイルス感染症の感染拡大など,事業経営に影響を与える災害等が発生し,社会環境も大きく変化しています。このような状況の中,経営の基本計画である「福山市上下水道事業中長期ビジョン(経営戦略)」と5年間の「前期実施計画」に基づき,限られた財源を有効活用し,重要度・優先度を踏まえた施設の更新・耐震化に取り組むなど,より一層の経営健全化と市民サービスの維持・向上に取り組んでいるところです。水道は,市民生活や社会経済活動に欠くことの出来ないライフラインです。これからも,安心・安全な水を安定的に供給するため,将来にわたって持続可能な事業経営を行い,市民に信頼される水道事業をめざしていきます。